徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

肥後の女

2020-04-30 22:08:38 | 音楽芸能
 この曲は民謡三味線の本條秀美さんが、平成22年度に「熊本市制100周年記念人づくり基金」に応募され、その支援を受けて研修を積んだうえで作曲された記念すべき作品。植木町の「民謡田原坂保存会」の中心メンバーとして長年活動しておられる本條さんが、男の歌である「田原坂」とは違う女性らしい歌をという意図で作曲されたもの。熊本弁をまじえた佐藤紘一さんの作詞とマッチして軽妙な味を醸している。
 詩を読んでいくと、思わずニヤリとするくだりが何ヶ所かある。宮本武蔵の「ぶっきら棒」は吉川英治の「宮本武蔵」をお読みの方ならピンと来ると思うが、武蔵のお通さんに対する態度がそう表現されていたと記憶しているし、漱石先生が「なみなみならぬ恋」とは那美さんをかけた表現だろう。ちなみに「いっちょ」という熊本弁には「ひとつ」と言う意味プラス「お願い」のニュアンスが込められている。標準語で言うなら伊東四朗のギャグではないが「どーかひとつ」というニュアンスだ。


漱石「草枕」の一節


2012.5.18 熊本城本丸御殿 春の宴
作詞:佐藤紘一 作曲:本條秀美
立方:少女舞踊団ザ・わらべ
地方:本條秀美と秀美社中・中村花誠と花と誠の会

しょせん伝説とは

2020-04-29 18:11:20 | 歴史
 熊本城の壁や畳には、籠城戦に備えて「かんぴょう」や「ずいき」が仕込まれている。という話はわれわれ熊本県民はよく聞く話だ。熊本城を築城した加藤清正公に関するこうした逸話がどうやら後年創作された話らしい、という記事が今朝の熊日新聞に掲載されていた。そういう話を裏付ける資料や古文書の記述もなく、言われ始めた時期も不明らしい。
 これと同様の話で、清正公による築城時、その実を食料とするために多くの銀杏が植えられたという話もよく聞く。肥後考古学会会長としておなじみの富田紘一さんによれば、清正公の時代に植えられたと伝えられる銀杏で現存するのは、本丸の1本と加藤神社の拝殿脇にある1本の計2本だけで、この2本はいずれも雄株で実は生らない。しょせん伝説というのはその程度のものと富田先生は言う。


今日の宇土櫓

桜花散るを惜まぬ人やある

2020-04-28 18:37:00 | 世相
 本妙寺へコロナウイルスの早期終息を願って二度目の参拝に。参拝者は数えるほどしかいない。浄池廟拝殿では僧侶たちによる御祈祷が行われていた。おそらく「コロナ退散」も祈っていたのだろう。
 午後からは先日録画した「古典芸能への招待」のうち「湯谷(熊野)」をじっくりと観た。終盤の「降るは涙か桜花 散るを惜まぬ人やある」のくだりで、そう言えば今年の桜はコロナ騒動で心穏やかには見られず、いつの間にか散ってしまったなぁという感慨が湧いてきて切ない気持になった。


浄池廟拝殿では僧侶たちの御祈祷の声が


いかにせん 都の春も惜しけれど なれし東の花や散るらん

第26回くまもと全国邦楽コンクールも延期!

2020-04-27 23:10:41 | 音楽芸能
 長谷幸輝検校没後100年記念として行われる予定の「第26回くまもと全国邦楽コンクール」は、6月14日開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、8月10日(月・祝)に延期されることが決まった。4年前の熊本地震の時も11月に延期されたが、今回はコロナ情勢が先行き不透明であり、はたして8月に開催できるかどうか心配だ。


昨年の最優秀賞受賞者・本條秀五郎さん(三味線)


         ▼今年の本選出場者

わが父 こころの謡蹟

2020-04-26 22:20:42 | 伝統芸能
 今夜の「古典芸能への招待」(Eテレ)では、人間国宝の喜多流能楽師・友枝昭世さんが舞囃子「田村」を舞われ、その圧倒的な存在感は、以前ナマの舞台を拝見した時よりも迫力を感じた。

 ところで、来月はわが父の没後20年。父がまだ四つか五つだった頃、立田山麓の泰勝寺跡に住んでおられた長岡家(現細川家立田別邸)に日参していた。お坊ちゃまの遊び相手だったが、お屋敷で謡曲のお稽古が行われる日は、幼い父も末席に侍らせられていたという。父は門前の小僧よろしく謡曲「田村」の「ひとたび放せば千の矢先・・・」という一節だけは終生忘れなかった。

 謡曲「田村」の謡蹟(謡の舞台となった跡)は清水寺や坂上田村麻呂の歴戦の地なのだろうが、わが父にとって謡曲「田村」の謡蹟は泰勝寺跡の長岡家だったにちがいない。

▼謡曲「田村」 結末の地謡
あれを見よ不思議やな。味方の軍兵の旗の上に。千手観音の。光を放って虚空に飛行し。千の御手ごとに。大悲の弓には。知恵の矢をはげて。一度放せば千の矢先。雨霰とふりかかつて。鬼神の上に乱れ落つれば。ことごとく矢先にかかつて鬼神は残らず討たれにけり。ありがたしありがたしや。誠に呪詛。諸毒薬念彼。観音の力をあはせてすなはち還着於本人すなはち還着於本人の。敵は亡びにけりこれ。観音の仏力なり。


父の生家から泰勝寺の境内へ入る虎口


毎日くぐったであろう山門


緑に覆われた庭園


祭事が行われていた神殿


北側の奥にお屋敷が

高校総体および総文祭の中止

2020-04-25 15:44:05 | スポーツ一般
 全国高等学校総合体育大会(高校総体)がどうやら中止になりそうだ。その予選である熊本県高校総体は5月末に迫っているのでどうするのだろうと思っていたが、現在の新型コロナ情勢ではやむを得ないだろう。
 僕が高校3年だった1963年、それまで競技種目ごとに行なっていた高校選手権を統合化、総合体育大会として再スタートした。それから57年、58回目となった今年、初めての中止となる。やむを得ない措置とはいえ、最大の活躍の場を失った各競技高校生たちの今後が心配だ。




 一方、文化系部活動の祭典である「熊本県高等学校総合文化祭」は早々に中止が決まった。個人的には毎年楽しみにしている「総文祭パレード」を見られないのが残念。特に吹奏楽のマーチングはホールでの演奏会とは異なり、至近距離で迫力あるサウンドに触れることができるのが魅力だった。また来年を期待して待とう。


最初の1音で心をつかむ

2020-04-24 20:37:04 | 音楽芸能
 昨夜、何気なく回したチャンネルのBS-TBSで「オトナ女子ストーリーズ」という番組をやっていて、今話題のサックスプレイヤー・米澤美玖の密着ドキュメントが放送されていた。再放送だったようだが今回が初見。この人の名前は聞いたことがあるが演奏するところを見るのは初めてだ。華奢なからだながらなかなか迫力のある演奏でファンになりそうだ。女性のサックスプレイヤーでは小林香織さんをよくYouTubeで見ているが、またひと味違った彼女の演奏を見る楽しみが一つ増えた。彼女が目標としているという「最初の1音で心をつかむ」プレイヤーになれるよう応援したい。





虫垂れ衣

2020-04-23 19:18:29 | 歴史
 新型コロナウイルスの勢いはまだまだ続いているようだ。東京都では明後日から2週間の「ステイホーム週間」が始まるし、熊本でも外出自粛の空気が徐々に強まり、散歩に出かけるのも憚るようになった。しばらくは巣ごもり状態が続くだろう。

 2日前の熊日新聞にこんな記事が載っていた。コロナウイルス問題に関する首長らの会見はマスク着用が普通になっているが、手話通訳がいない場合もあり、聴覚障害者には伝わらないというのだ。手話通訳がいない場合は読唇術みたいなことで内容を理解するのだそうだがマスク着用ではそれができない。なるほどそんな問題があったか。そもそも記者会見の場ではたしてマスク着用が必要なのだろうか。記者たちとのソーシャルディスタンスは保たれているようだし、会見の場の飛沫防止対策はいくらでもあるはずだ。聴覚障害者に限らず、僕も重要事項の会見は首長の口から直接言葉が発せられるところを見たい。そこに会見をする意味があると思う。

 FB友の月丘清風さんのフェイスブックに面白い記事があった。ネットメディアをクリッピングしたもののようだが、コロナ対策ファッションとして、市女笠に虫垂れ衣という、さながら平安時代の女性の「壺装束」をお勧めというもの。これにマスクを組み合わせれば、飛沫対策は万全だし、横に広がった市女笠のサイズ感でソーシャルディスタンスもとりやすいという。冗談半分かもしれないが、平安女子のファッションはウイルス感染防止の意味でも理に適っていたのかも。

 下の映像は、黒塗笠に虫垂れ衣を着けた衣装で踊る花童の「水前寺成趣園」。


島めぐり

2020-04-22 21:45:28 | 音楽芸能
 かつて熊本城本丸御殿で行われていた「春の宴」および「秋夜の宴」では民謡、新民謡、端唄・俗謡、長唄、大和楽、俚奏楽など実に多彩な音楽が演奏され、その多くに中村花誠さんの振付による花童の舞踊が花を添えた。その中で僕が強く心惹かれたのが「俚奏楽」。「俚奏楽」というのは民謡・端唄三味線の大御所、本條秀太郎さんが創始した新しい三味線音楽。全国津々浦々に、消えてしまいそうな古い民謡・俗謡がある。それらを掘り起し、新しい現代的な解釈で甦らせ、継承していこうというのが本條さんの提唱する「俚奏楽」である。
 その「俚奏楽」の中でも、僕が最も好きな一曲がこの「島めぐり」である。この「島めぐり」は伊豆諸島や小笠原諸島に残る民謡を集めた異色の組曲。神津節(神津島)、御蔵島節(御蔵島)、八丈ショメ節(八丈島)などの伊豆諸島民謡に、「夜明け前」「ギダイ」「ウワドロ」などの小笠原諸島民謡などが織り込まれている。本條秀美さんと秀美会の皆さんの唄と三味線、中村花誠さんと花と誠の会の皆さんによる囃子。それに花童の舞踊。この映像に今回初めて歌詞を付けてみた。さてどんな出来具合となりましたことやら。
※上の絵は川瀬巴水「大島 波浮の港」


森田曠平 「八丈のめならべ達」



楽しみな週末の番組2本

2020-04-21 13:14:58 | テレビ
▼ブラタモリ「水の国・熊本編」(4月25日 19:30 NHK総合 再放送)
 ブラタモリ熊本編第1回の「熊本城編」は、やり過ぎと思われるほどの加藤清正による熊本城防衛の仕組を縷々説明していたが、西南戦争という近代戦でも難攻不落だった理由についてあまり説明がないという、やや期待外れの内容だった。しかし、第2回の「水の国・熊本編」は、熊本の地質や地形の成り立ち、「水の国」となった理由がわかりやすくまとめられていたと思う。また、熊本人が清正公を敬愛してやまない理由、つまり、河川改修や築堤や井手開削など、先進的な土木技術を駆使して治水や農業増産に多大な功績を残したことなどがよくわかった。


2016.4.2放送 桑子真帆アナ最後のブラタモリ出演


▼古典芸能への招待(4月26日 21:00 NHK-Eテレ)
 古典芸能のえりすぐりの舞台を紹介する「古典芸能への招待」。今回は人間国宝・友枝昭世が坂上田村麻呂の武勇を舞う舞囃子「田村」。ともう一つは、平宗盛の愛妾熊野(ゆや)が、遠く離れた故郷で病に臥せる母を思いながら、主の求めに応じ桜舞い散る中、舞を舞う美しくせつない心情を描いた能「湯谷(ゆや)」。今回は喜多流の演能で熊本ゆかりの役者も多数含まれる。
 「田村」はわが父が幼い頃、立田長岡邸(細川家立田別邸)で聞き覚えた思い出の曲。また、「熊野」は夏目漱石が熊本時代に盛んに謡っていたことが、鏡子夫人や寺田寅彦らの証言でわかっており、「吾輩は猫である」の中にもうまく使われている。


肥後能楽の系譜を継ぐ人間国宝・友枝昭世


2016.8.6 水前寺成趣園能楽殿 第57回出水神社薪能における金春流能「田村」(シテ 田中秀美)

巣ごもりばっかしじゃ・・・

2020-04-20 22:27:08 | 
 三日ばかり巣ごもりしていたので昼過ぎから散歩に出た。いつものように熊本城の方へ歩き出したが、ソーシャル・ディスタンスのこともあるので、できるだけ人があまり通らないコースを歩いてみようと、まず細川刑部邸へ向かった。中には入れないので外から邸内の青もみじをしばらく眺めた。何とも目に優しい新緑に癒された。細川刑部邸の前の石畳を砂薬師坂の方へ下り、砂薬師坂の手前で北の方へ曲がった。二の丸北側のヘリまで進むと清正公重臣の森本儀太夫預り櫓跡がある。ここから本妙寺がある中尾山やその他の西山が遠望できる。今度は取って返し、砂薬師坂の南側、かつて漆畑と呼ばれた広場に向かう。ここには今、崩落した熊本城石垣の裏込石などの置場となっているが、木々に囲まれた広場の外周は散歩できるようになっている。木の葉が風にそよぐ音やウグイスの鳴き声を聞きながらゆっくり一周する。次は藤崎台球場の方に登って護国神社の前へ。今日は鳥居の下で一礼だけして、鳥居前の広場へ。梅の開花時期は多くの人が訪れる梅園になっているが今日は人ひとりいない。地面のクローバーの花が咲き誇っていた。広場のベンチで一休みした後、二の丸広場を通って帰った。ゆっくり1時間半ほどの散歩を楽しんだ。


細川刑部邸の青もみじ


護国神社前広場のクローバー

スポーツ競技会のゆくえ

2020-04-19 18:49:51 | スポーツ一般
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため各種スポーツの競技会が中止もしくは延期となる動きが続いている。毎春の楽しみだった「熊本県陸上競技選手権大会」は7月に延期となったが、はたして開催できるだろうか。その他も多くの競技会が中止となった。このままの状態が続けば5月末から開催予定の熊本県高校総体も予定通りの開催は難しいかもしれない。
 4年前の熊本地震の時も、開催延期となったり会場が変更されたりしたが、今回は先行きが全く見えない。

【中止決定】
 ①金栗記念中長距離選抜大会  ②八代陸上競技選手権大会  ③熊本私学陸上競技大会
 ④天草春季陸上記録会     ⑤熊本マスターズ記録会   ⑥第1回熊本県長距離記録会
 ⑦第1回熊本県跳躍記録会

【延期決定】
 ①熊本県陸上競技選手権大会(7月中予定)


2016年7月9日 熊本地震のため3ヶ月遅れで開催された熊本県陸上競技選手権大会

星つむぎの歌

2020-04-18 17:44:01 | 音楽芸能
 「snclimbエス・クライム」さんのブログに平原綾香の「星つむぎの歌」が紹介されていた。しばらくこの歌を聴いていなかったので何だか懐かしい気がした。
 熊本市民会館で行われた平原綾香コンサートを妻と聴きに行ってからもう11年が過ぎた。そのコンサートで歌った20数曲の中でも「星つむぎの歌」はメインの曲の一つだった。おそらくシングアロングがあるだろうと予想して事前に少し練習もして行った。
 11年の間には東日本大震災もあった。熊本地震もあった。そして今、僕らは未知のウイルスと戦っている。今こそこの歌を歌いたいと思った。


阿蘇草千里の星空
キロクマさんより

僕らは一人では生きていけない
泣きたくなったら思い出して
風に消えない願いのような
星の光でつむいだ歌を


郷土文化財制度

2020-04-17 20:48:05 | 日本文化
 先月中旬だったか、熊本市は未指定文化財の掘り起こしを狙いとして「郷土文化財制度」を創設する計画であることが熊日紙に掲載された。具体的にどういう文化資源を対象にする考えなのかよくわからないが、わが家の近くでこの10年ほどの間に消えて行った文化資源には次のようなものがある。
 もし、この制度が10年早く始まっていればこれらは残ったのだろうか。


小泉八雲の熊本二番目の家(西外坪井町堀端)の前にあった地蔵堂


京町番所の北側に掘られていた空堀


西南戦争で戦死した与倉知実中佐旧居跡

鎮魂と復興を祈る

2020-04-16 18:48:19 | 熊本
 熊本地震の本震から今日で4年。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、加藤神社での祈りのキャンドルも残念ながら中止された。
 今夜は、昨年および一昨年のキャンドル風景を見ながら、犠牲者の鎮魂と熊本の復興が一日も早いことを祈りたい。


2018年の風景


2019年の風景