ひさの星/斎藤 隆介・作 岩崎ちひろ・絵/岩崎書店/1972年初版
大人の方なら小さいころ読んでもらったか、手にとってみたことがあるかもしれない絵本。斎藤隆介さんといえば、すぐに滝平二郎さんとの絵本が思い浮かぶが、この本の絵は岩崎ちひろさん。
文も絵も同じかたの絵本とちがって、文と絵を別の人が分担する場合、絵をかく人を作者かきめるのか、出版社の人が選んでいるのかがよくわかりませんが、この絵は斎藤さんの世界をやさしく表現していてピッタリです。
無口でおとなしいひさは、犬にかまれた赤ん坊を助けてけがをするが、おっかあから、どうしてけがをしたかについて聞かれてもなにも語ろうとしない。
ある日、夏の大雨の後、川のあさのほたるをとろうとして、川に落ちた子供を助けるが、代わりに自分の命を落としてしまう。村の人が夜中探し回るが、どうしても見つからない。
ひさがいなくなった日の夜から雨がやんで東の空にあおじろい星が輝きはじめる。村の衆は、この星をみるたんびに「ああ、こんやもひさの星がでてる」といいおうたげな。
私の生まれ故郷、秋田が舞台で、方言がさりげなくつかわれていて親近感があります。
無口で多くを語ろうとしない「ひさ」は、本当は、とても強く優しいこころを持った少女だったんですね。
「ひさ」のように、自分にどんな結果をおよぼそうとも、やるべきことをなしとげる真の勇気をもつことは、なかなかできそうにもないですが・・・。
40年以上前のもので、今なかなか、こうした作品はできにくいという感じもあるところ。