エスキモーの民話/本多勝一・訳/すずさわ書店/1974年初版
本多勝一さんの訳ですが、故郷の伊那方言が使われていて、戸惑うところもあります。
会話の部分が「お前さまをよめにほしがっとるで」「そっちのほうだで」などとなっています。
「捨てられた犬と少女」は、少女も犬も捨てられるところからはじまります。小さな部落が伝染病に襲われ、生き残った人は、土地を逃げ出し、この地に残ったのは少女と犬。
少女と犬は避難用のイグルーで暮らすことに。(イグルーは、雪または土やコケや石で作られた家)
ある晩犬が病気になり発熱に苦しみ、汗が毛を凍らせてしまいます。犬は悲しくうちひしがれた声で、「白熊がよめにほしいとやってくる」と少女にいいます。
「熊がみえたに!」と少女がさけぶと、犬は少女に熊に出す食べ物を用意するようにいい、目くばせしたらすぐに外にでるように指示します。
熊がやってきて「娘はもらっていく」というと、少女はイグルーを飛び出し、イグルーのなかからは決闘の音が聞こえます。
おどろいたことに、病気で弱り切っていたはずの犬は、熊を殺していました。しばらくは熊の肉が食糧用に確保できます。
また犬が病気になり、今度は二頭の白熊がやってきます。
前と同じように、この二頭も大量の新鮮な食料になります。
じつは、犬が病気になるのは、闘いの準備をするためでした。
そして、今度は三頭の白熊がやってきますが・・・。
犬と人間がでてきて、犬の恩返しの話かと思うと、エスキモーでは対等で共存する関係です。