名馬キャリコ/バージニア・リー・バートン:文・絵 せた ていじ・訳/岩波の子どもの本/1979年
今は映画でもテレビでもめったに西部劇を目にすることがなくなりましたが、古き良き時代の西部劇風の躍動感あふれる絵本です。
原著は1941年。絵はモノクロで版画のよう。一ページに基本的に二コマづつで、これが効果的です。
キャリコという馬は、頭がめっぽうきれて、足のはやさは、とびっきり。それに長いはなずらは、警察犬みたいによくきききます。キャリコは、赤ん坊の時オオカミの群れからカーボーイのハンクにたすけられて、その恩を忘れず、ハンクのためなら、この世の果てにもいくつもり。
ハンクとキャリコの住むサボテン州は、どこにも囲いがなく、鍵もなく牢屋もない平和なところ。
ところが、がんばりダンの駅馬車が、旅の客と世間のうわさをはこんできます。ダンは、悪土地帯で、すごみやスチンカーとその一味をみかけたのでした。
スチンカーはサンタクロースにあっても、ガンをつきつける いやらしい男。子どものプレゼントまで奪い取る悪漢。一味は五人で一癖も二癖もある面々。
悪漢どもが、サボテン州をみおろすと、あけっぴろげの牧場に、立派なふとった牛たちが、のんびり草をはんでいるばかり。
「こいつは、よりどりみどりだわい!」と、すごみやスチンカーは、黒いひげをひねりあげます。
立派な太った牛たちの一群れを盗み出した悪漢一味は、険しい山のなかほどのほら穴をみつけかくれていました。その夏中、牛を盗み出し、かくれがのそばの、ふくろ谷に牛をかくします。
秋になってカウボーイたちが、牛の群れをさがしますが、みつかったのはわずか。すごみやスチンカー一味のしわざにちがいないと、人相書きをまわし、賞金を懸けます。
アリのついてくるてがかりものこさない用心深いスチンカーでしたが、名馬キャリコは警察犬のようなはなで、かくれがにたどりつき、川岸のどろのなかをころげまわり、スチンカーの馬どろずみにばけ、スチンカーがまたがると、あったいうまにハンクのところへまいもどります。
サボタン州の人びとから賞金をもらったキャリコは、クリスマス前の晩に、子どもたちをぜんぶ、学校によんで、さかんなおいわいをしようと計画します。
学校の地下室から逃げ出したスチンカーが、追っ手の一隊からうまくのがれますが、キャリコは一味をとらえるまえに、牛を探す出すことに。
このあと大暴走をはじめた牛の群れと、謎の荷物をつんだ駅馬車をのとったスチンカー一味のスリリングなやり取りが続きます。このあたりはまさに映画をみているよう。
ラストは意外で、悪漢たちが改心し、子どもたちとあそびたわむれ、おまつりを楽しんで新年をむかえます。
コミカルな場面もいっぱいで、みどころ満載。西部劇フアンには、おすすめの絵本です。