きえたアルプスの牧場/オックスフォード世界の民話と伝説6 スイス編/植田敏郎・訳/講談社/1978年改訂版
日本の昔話に馬鹿息子というのがよくでてきますが、この話は馬鹿ではすみません。
なかなか子どもに恵まれなかった夫婦に生まれた男の子。
あまやしてそだてられ、傲慢にそだった息子の父親が亡くなって、山の牧場も畑もすべて自分のものになった息子は、母親まで邪魔者扱い。食べ物もろくにやらず、ひもじいおもいをさせていました。
息子にはカトリンという好きな女がいました。息子は、このカトリンの靴をよごさないため、山の上の牧場までチーズで階段を作り、チーズの隙間はバターでうめるほど。
さらに、小屋の中で火を燃やすためのにバターをつかい、おいしいものは、まだらの牛と犬に食べさせていました。
母親が、息子のところに食べ物と飲み物をもとめてきても、すっぱい牛乳と、残り物のくずをのっけたパンをあげるだけ。
あまりの仕打ちに、母親は天に向かって手をさしのべながら「山と岩よ! あの積み深い者たちの上におちてこい!」と叫びます。
すると空が急に真っ暗になり、大きなひょうが二人に上におそろしいいきおいでふりかかります。小屋のまわりで大嵐がふきあれ、氷河が花のさいている牧場を雪と氷のしたにうずめてしまいます。
ちょっとさみしい昔話です。
すなのたね/シビル・ドラクロワ・作 石津 ちひろ・訳/講談社/2018年
夏休みが終わり、海から帰ってきた女の子が、サンダルにのこっていた砂を種にみたて、まいてみます。
パラソルが とつぜん にょきにょき はえてきたら どうする?
風車の森ができたらどうする?
アイスクリームが とれたら どうする?
お城ができたらどうする?
みずやりを しすぎて、おおきな波ができたらどうする?
ひろーい 砂浜が目のまえに あらわれたら?
夏の楽しかった思い出を、弟とあれこれ想像していきます。
あふれるれるような色使いの絵本が多いなかで、白黒が基調で、想像の世界が黄色と最小限の色使いですが、姉と弟の思いがあふれています。