岩手のむかし話/岩手県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年
継母からいじめられ、しまいにはころされてしまうかもしれないと、父親から逃げ出すように言われた太郎。風呂敷に晴れ着と、銀の笛を包んだ荷物を持って旅に出て、長者のところで働くようになります。そこでつけられた名前は「かってぇぼ」。
長者の家では、みんなが嫌がる仕事を、はいはいと働いていた太郎でしたが、長者の家でつかってもらうまえに、父親にいわれたとおり、顔に泥をぬっていました。いつも、一番後に風呂に入って、すっかり顔を洗い、晴れ着を出すと、銀の笛を取り出し、練習をしていました。
長者の家にはむすめが三人いました。ある日、末のむすめが、笛の練習している太郎に気がつきますが、なにか理由があるだろうと、だれにも何も言わずにいました。
秋祭りには、村同士の笛上手が集まる笛比べがあります。長者は、今年こそ一等賞をとろうと、若い使用人に仕事を休ませて練習をさせていましたが、笛吹き比べがすすむにつれて、一番になりそうなのは、隣の村の人と決まりそうになります。がっかりする長者に、すえのむすめが、「かってぇぼ出せばいいんだ」といいます。みんなは笑いますが、とにかくだしてみるべと、かってぇぼがでると、その笛の音は、いままで聞いたこともねえような上手なもので、一番に。
長者は、「いままで粗末にしたことを許してほしい。すえのむすめといっしょになって、家をついでもらいたい」と頼みます。それからふえふき太郎は、長者の家をつぐことに。
継母が出てくると、女性が主となる昔話が多い中で、男が主人公になるという話です。