世界の水の民話/日本民話の会・外国民話研究会:編訳/三弥井書店/2018年
遠い昔、浜辺に住んでいたアザという娘が、とてもハンサムな若者を愛していた。ところが動乱の時期になり若者はトルコとの戦いにでていった。
若者は戦争に出ていく前に金の指輪を渡して、「待っていてくれ、忘れないでくれ」「もしこの指輪をなくしたら、君の不実のあかしだ」と、いいのこします。
娘は贈り物を大事にし、何年もずっと若者の帰りをまっていましたが、若者は戻ってきませんでした。
あるとき、娘が海へ洗い物をしにいき、物思いに沈んでいて、指輪をするっと海に落としてしまいました。そこへいきなり波がきて贈り物は消えてしまった。哀れなアザは、大事な贈り物を取り戻そうと波に飛び込んだが、おぼれてしまった。
いらい、海はアゾフー不幸な娘、愛しい人の帰りをまつことができなかった娘の名でよばれるようになった。
このアゾフ海域はクリミア戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦など、多くの重要な歴史的出来事の舞台。いまは、ウクライナとロシアの戦争の最前線。古くは、ギリシャ、ローマ、ビザンチン、オスマン帝国などの影響を受けてきました。
この地域には、ウクライナ人、ロシア人、クリミア・タタール人など、さまざまな民族が共存していましたが、いまはどうでしょうか。