人形からとどいた手紙ーベルリンのカフカ/ラリッサ・トゥーリー・文 レベッカ・グリーン・絵 野坂悦子・訳/化学同人/2023年
副題に「ベルリンのカフカ」とあるので、あの作家のカフカ?と思いながら読みはじめました。
カフカと恋人のドーラが公園の散歩中、人形をなくしたというイルマにあいます。悲しんでいるイルマに、人形のスープシーは、ちょっと旅にでたんだと語りかけたカフカ。人形の手紙をあずかる郵便屋となのり、このあと人形からあずかったといって手紙をイルマにわたします。
一通目は1923.10.23の日付で、冒険の旅に出たという手紙。つぎの日はハイキングして山にきた。そのつぎの日はパリ。好きなものだけ食べている。イギリスでピーターくんとお茶をしたこと。スペインのバロセロナでは、ガウディさんに建築の話を聞いたこと、エジプトのピラミッドをみたことが続きました。
1923.11.8の手紙は、前より短くなりました。それからカフカは公園にあらわれませんでした。手紙のやり取りは公園でされていたのです。イルマはまちました。雨が降ってもまちました。
イルマが、ドーラに尋ねると、「頭や目のおくが、ずっと痛い」が、「郵便屋の仕事をわすれたわけじゃないわ」と、1923.11.11の手紙をわたします。そこには、「南極に行くから、これで手紙は書けません。だから、これでさようなら」と書いてありました。
もういちどイルマに会ったカフカは、旅に出るというイルマに、ノートとペンをもっていき、冒険の旅を毎日書き残しなさいといい、背筋を伸ばし、ほほえみます。
そして、「これからたくさんあそんで、いつか冒険の旅にでる人」と「これから最後の旅に向かう人」は さよならをいって はなれていきました。
生前のカフカのエピソードをもとに書かれた絵本。
生前評価されることなく亡くなったカフカ(1983~1924)ですが、ただ一回の出会いから、少女を勇気づける手紙を着想した優しさに感動です。
なんとなく敬遠していたカフカですが、これを機会に読んでみようと思いました。絵本であれ であいは貴重です。