どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

かわこの薬・・島根

2025年02月11日 | 昔話(中国・四国)

      島根のむかし話/島根県小・中学校国語教育研究会編/日本標準/1976年

 

 カッパは日本各地で共通かと思っていると、島根では”かわこ”という。昔話は、地域の言葉が反映していないと味が出ません。共通語にすると、微妙な味の違いが薄れます。

 

 かわこの中でも、力の強いのがおって人間を困らせていた。
 ある男がこのままでは、人間がばかにされてしまうと、牛のせなかに、かわこのすきな、あぶらげやとうふをいれた桶をつないでおいた。かわこは、いいにおいにひかれて、牛に近づき、桶のなかのものを食べようとした。しかし、桶に少しでも触れば、すぐにわかるように鈴がつけてあったので、かわこが、桶の中に手を入れると、「カラン、カラン」となり、その鈴の音で、牛がおびえてかけずりだした。

 かわこは、牛に引っぱられて、からだじゅうがきずだらけ。そのうえ、さらの水がだんだんなくなって、力が抜けてしまった。

 男が、ぐったりしたかわこを、もっていた鎌でたたくと、かわこは、「もう、悪いことはしません。どうぞこらいでください。」と、泣き泣きわびて、「こら、どんな病気にでもきく薬です。これをさしあげます。」と、ちいさな袋をさしだした。
 男は、どんな病気でもきく薬ならと、薬をもらって、かわこをにがしてやったと。