ふゆのあとには はるがきます/文・石井睦美 絵・あべ弘士/アリス/館2023年
「あ、ゆきむし」「ゆきのきせつに なるわね」
ゆきむしが とんで、幾日かすると雪がふりはじめました。雪が一日中降り続くと、街も森も 白く冷たい 綿ぼうしでおおわれていました。
雪は降ってはやみ、やんではふります。
街では雪かきに大忙し。森では、きつつきが木の枝につもった雪をはねのけ、虫を探しています。リスは蓄えてあったどんぐりを、むしゃむしゃ食べ、おなかがいっぱいになると、また眠ってしまいました。くまも、眠り続けています。
やがて、おひさまが顔を出す日が多くなると、森の木の根元の雪も すこしずつ とけだし、丸い輪が できました。
それは、春がくる、というしるしです。
おだやかな雪国の情景をしめす表現。
”しずかな朝は、外は一面の雪。音がなくなるのは、雪が音を すいとってしまうから”
おひさまが 顔を出すと、積もった雪の表面が キラキラ光ると ”ほうせきを ばらまいたみたい!”
このところの各地の積雪の映像を見ると、雪国で暮らす過酷さがつたわってきます。朝おきると、雪かきをしないと、外にでることができません。雪の少ないところで生活していると、一日何回も雪かきしないと、生活が成り立たないというのは、実感がわきません。
ところで、雪虫(じつはアブラムシ)は、北海道でみられるといいますが、ロマンチックなものではないようです。発生から初雪がふるまでの日数は、以前より遅くなっているといいます。
春のしるしとして、木の根元の雪がとけ丸い輪ができる現象は”根開き”というようです。”根開き”は、木の温かさにあって、木は地下水を吸い上げ、その水が外の空気よりも温かいからだといいます。さらに、雪は真っ白なので、太陽の光をほとんど反射しますが、黒っぽい木は太陽光によって温められ、この熱によって、幹の周りの雪がとけて、土が見えるといいます。