現代アジア児童文学選5/アジアの笑いばなし/ユネスコ・アジア文化センター・編 松岡享子・監訳/東京書籍/1987年
とんちで有名なムラー・ド・ピアザの家の隣に、理由もなしにしょっちゅうほえる犬がいました。
ある晩、真夜中を過ぎたころ、とつぜん隣の犬がけたたましくほえだしました。がまんできなくなったムラ―が、杖で犬をおもいっきりたたきはじめると、犬がキャンキャンなきはじめ、さわぎをききつけた犬の飼い主が怒ってさけびました。
「もしも、お前がこいつのせなかをぶったら、わしがお前の背骨をへしおってやる。こいつの足にさわったら、お前の足をたたき折ってやる、わかったか?」
ムラ―は、犬の飼い主に、天真爛漫にこたえました。
「ああ、よくわかった。そういうことなら、これからは、しっぽだけぶつことにするよ!」