兵士のハーモニカ/ロダーリ童話集/関口英子・訳/岩波少年文庫/2012年
イタリアのラクイラ、九十九のふき出し口のある噴水が舞台になっています。
とてもまずしく、世の中のことはなにも知らない一人暮らしの羊飼いが、ぶつぶつつぶやいていると、一人のおばあさんがとおりかかり、たのみを一つきいてくれたら、お金持ちになる方法を教えてあげようとはなします。
ラクイラの噴水の口をかぞえて、いくつあったかおしえてくれたらお前さんの望みをかなえてあげようというのです。
羊飼いは七頭の羊をもっていましたが、おばさんは六頭は世話できるが、あとの一頭はおまえがつれていくよういいます。
羊飼いは、初めて見る町の活気ある様子に目を見張りますが、羊飼いがつれていた羊をみた商人が、売り物かどうかもちかけます。
商人は相手の無知につけこもうとはせず、ふさわしい金額で羊を買い取ります。
おもいがけないお金を手に入れた羊飼いは山小屋にかえろうとしますが、おばあさんとの約束を思い出し、噴水の口を数えようとしますが、この羊飼いは七より大きい数はかぞえられませんでした。
山小屋にかえった羊飼いが、羊の世話をしていたおばあさんに、噴水の口は七つあったというと、一週間後にもういちど口の数をかぞえてくるよういわれます。
町にでかけるとき、一度に五頭しか世話できないからと六頭目は羊飼いがつれていきます。
羊飼いはこのあいだの商人にあい、前より高い値段で羊を取引します。
そのあとで噴水のところにでかけ、七までかぞえたところでとまってしまいます。そこであった男の子の助けをかりようとしますが、その子は二十までしかかぞえられませんでした。
さらにその一週間後、今度は三頭目の羊を売り、噴水の口をかぞえはじめると、様子をみていた一人の娘が親切に手助けしてくれます。
噴水の口が九十九あったのを、おばあさんにいおうとしますが、山小屋にはおばあさんはいません。残った四頭の羊がのんびりと草を食んでいるだけでした。
しかし羊飼いには三頭の羊を売って手に入れたお金と、九十九の数字、夢のような町の景色と新しいことがいっぱいつまっていました。
噴水の口が九十九あるというのは、おばあさんははじめから知っていたのですが、何も言わず、羊飼いがその数を知るまでまちます。
さらに羊を町の市場につれていくといい値段で売れることも自然にきずくよう羊をつれていくよう仕向けるあたりがおばあさんの知恵です。
強制ではなく、さまざまなことを自然に習得させるようにしていくさまは、なにか教育の原点を考えさせてくれる物語です。
もっともいまでは悠長すぎるかな?
(イタリア政府観光局HPから)
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