現代アジア児童文学選5/アジアの笑いばなし/ユネスコ・アジア文化センター・編 松岡享子・監訳/東京書籍/1987年
イランの皮肉たっぷりのショート。
貧しい暮らしをしている老人が、お金持ちから食事にまねかれました。けれども、いつものぼろを身にまとっていたので、だれからも客あつかいしてもらえず、宴会のご馳走も、残り物をすこし食べさせてもらえただけでした。
一週間後、老人は、またおなじ家にまねかれました。老人はこんどは、手立てを尽くしてようやく借りた、すばらしくりっぱな衣装を身に着けてでかけていきました。
老人が、その家につくと、うやうやしくでむかえられ、食事のときは、テーブルの上座につくようにすすめられました。
さて、ごちそうがはこばれてくると、老人は、まずごはんをとって、それを、きている上着の片方のそでぐちからなかへいれました。それからもう片方のそでには、鳥の丸焼きをおしこみました。あっけにとられているほかの客にはかまわず、ふくらんだそでにむかって、こういいました。
「どうぞ、おすきなだけめしあがってください。きょう、わたしが、こうして丁重なおもてなしをうけているのは、みな、あなたさまゆえのことなんでございますから。」
創作ですから、誰が書いたものかが気になりますが、とくに著者名はふれられていませんでした。