やさしいたんぽぽ/安房 直子・文 南塚直子・絵 /小峰書店/2018年
日が暮れてだれもいなくなった野原にひとりの女の子がたっていました。おかあさんから、眠っている子ねこを捨ててきなさいといわれやってきたのです。
まだ小さく暖かい子ねこ。すてられたねこはどうなるのでしょう。真っ暗闇で、抱いてくれる人もミルクをくれる人もいなく。こねこはどうなるのでしょう。女の子は、なきながらつぶやきます。
すると女の子の足元が、ぴっかとひかりました。ちいさく、まるで黄色い豆電球がともったようです。 するとあっちにも ひとつぶ、こっちにも ひとつぶづつ黄色いあかりがふえていきます。そして野原は一面明かりの海になりました。
黄色い光は、たんぽぽでした。いぬやねこが、この野原に捨てられる日は、こんなふうにひかるといいます。
子ねこのために、たんぽぽの切り口からは、まっしろいミルクがあふれてきます。
子ねこの首にたんぽぽをかざると、電車がやってきます。電車にはたくさんのいぬやねこが。
野原から野原へ捨てられた動物たちをひろってはしる不思議な電車でした。
女の子のこねこも、<ひかりのくにゆき>の電車にのりこみます。
すてられそうになった動物たちは、ひかりのくにで、しあわせに暮らしているのでしょうか。
夕暮れとたんぽぽの黄色の絵が幻想的です。春の夕暮れには、素敵なできごとが起こるんですね。
たんぽぽから、こんな物語を紡ぎだす安房さんの世界です。