ひめねずみとガラスのストーブ/安房直子・作 降矢なな・絵/小学館/2011年初版(初出1969年)
風の子のくせに寒がりのフーは、くまのストーブ店でガラスのストーブを手にいれます。みかん色の光で、春の若葉にふわりとくるまっているようなストーブです。
「お日さまがおっこちてきたのかと思った」とやってきたのは、ひめねずみ。
ストーブに、おなべとやかんをかけ、ひめねずみは、料理をつくり、食後のあついお茶ものみます。
ひめねずみのやきりんごはとてもうまいのです。
ひとりぼっちだったフーとひめねずみは、いっしょにくらすことに。
しいんとこおりつくような寒い晩にオーロラという風の子のお客がやってきます。
「日のくれない国」にひかれたフーは、すぐに帰ってくるからと、オーロラと旅立ちます。
まってもまってもフーからは、手紙もはがきもきませんでしたから、一人のこされたひめねずみは、料理する張り合いもなく、つくるのをやめます。
悲しい気持ちでいく日もいく日もすごした、ある朝、ひめねずみはオーロラがおいていったコーヒーを思い出し、コーヒーをわかします。
コーヒーのかおりが森の中にたちこめると、かおりにひかれて、五十匹のひめねずみが、ストーブのまわりに集まります。
たった一人ぼっちだとおもっていたひめねずみは、たくさんの仲間が、同じ森の中にいたことをはじめてしります。
それから何年もたって、フーが遠い国からもどってきます。
フーがみたのは、千匹ものひめねずみでした。
昔と同じようにたった一匹のひめねずみがまっていると信じていたフーでしたが、よくよくきいてみると、料理の上手な女の子のひめねずみは、とっくに死んでいたのです。
フーが旅立つ日、多分二度とあうことがないことを予感したひめねずみ。
もどってきたフーは、おおぜいのひめねずみや小さくなったストーブを見て、ここに入っていくことのできない世界を見て、「さよなら」とゆっくり歩きだします。
真黒な森の中で、ガラスのストーブがもえるさまが、気持ちを温かくしてくれます。
降矢さんの絵も素敵です。