ぼんさいじいさま/木葉井 悦子:作・絵/ビリケン出版/2004年
この絵本ときめて購入したり借りたりする以外には、タイトルや表紙の絵を見て選びます。
表紙が盆栽で、「ぼんさいじいさま」とあるので、やや地味な印象でしたが、中身はまったく別の世界でした。
盆栽が大好きな、ぼんさいじいさま。
ある日、満開になったしだれ桜の盆栽をうっとりとながめていると、盆栽のなかにいたひいらぎの冠をつけた小さな小さな「ひいらぎ少年」が手を振ります。
「ぼんさいじいさま、お迎えに来ました」
「じいさま、きょうのことは ずーっとまえからきまっていました」
そこでじいさまは、縁側にすわりなおして、たばこを一服。しだれ桜の枝にちょっとさわってから、背筋をすっと伸ばしていいます。
「じゃ、でかけようか」
ぼんさいじいさまを見送るのは、ひなのとき高い木の上から落ちて怪我をしていた山場、荷馬車にひかれて骨を折ったねこのクリ。どちらもおじいさんの世話になったのです。
畑で鋤鍬をひいたり、荷馬車をひいた馬のサクラ、そして、でんでん虫、みみず、てんとう虫、からすもきつねも、みんなで「さよなら」をいいます。
二人は、ゆっくりゆくり風の向こうにきえていきます。
こんなふうにおだやかなお迎えがあったら、思い残すことはなさそうです。でも凡人にはこの境地にはなれそうもありません。
ひいらぎ少年がでてきますが、ひいらぎは、古くから邪鬼の侵入を防ぐと信じられ、庭木に使われてきたようです。
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