アジアの昔話6/松岡享子・訳/福音館書店/1981年
象が食べ物を探して森の中へ入っていくと、とつぜん鬼どもがおおぜい集まっているところへでてしまいました。鬼の王は、ちょうど象を一頭たいらげた夢からさめたばかりでした。そこへ象があらわれたので、夢がほんとうになったにちがいないと、すぐに象を食べようとしました。
象が、最後のたのみとして、殺される前に、親しいともに相談させてほしいというと、鬼どもはよかろうといいました。みちみち象は会うひとごとにたずねました。「夢の中で何かを食べたら、さめたあともそれを食べなければならないなんて、そんなことが道理にあっているでしょうか?」。するとだれもかれも、それは道理にあっているといいます。やっと仲の良いフクロウのところへたどりつき相談すると、フクロウもいっしょに行こうといってくれました。
フクロウは鬼どものところへつくと、ふかいねむりからさめたふりをして「ああ、今、驚くべき夢を見た。鬼の女王と結婚した夢だ。されば、すぐにも女王と結婚しなければならぬ。して、女王はどこにいる?」
すると鬼どもは、おこって、声高にさけびました。「ばかばかしい。夢を見たからといって、わしらの女王と貴様を結婚させるわけにはゆかぬわ。」
するとすかさずフクロウはいいました。「わたしの夢がほんとうにならぬというなら、夢を見たからといって、あなたがたの王が象を食べるというのは、どういうことですかな。あくまでわたしに親友を食うといわれるなら、わたしも、どうあっても、あなたがたの女王と結婚しますぞ。」
鬼どもはあきれかえって、なんといっていいやらわかりませんでした。そこで象とフクロウは、無事家にかえりました。
象とフクロウ、鬼の組み合わせが微妙です。