静岡のむかし話/静岡県むかし話研究会編/日本標準/1978年
巨人伝説は、地域の成り立ちと結びついているので、その土地のようすががわかっていないとあまり興味がないかもしれませんが・・。
だいだらぼっちのすむ秋葉山が、富士山より低いというので、富士山より高い山を一晩で作ろうという話。近江(滋賀)から土運びしてのどが渇き、遠州灘に両足をつっこみ、水を飲もうと左手を海岸近くについて、身をかがめると、左手が砂浜にめりこみ、人間の左手のような湖ができたと。これが浜名湖という。にぎりめしをひとくちパクつくと、ガチッと小石が歯にあたり、その小石をはきだすと、それが浜名湖に落ちて、小さな島に。それが、つぶて島という。
一晩中汗水かいても。おれんちの秋葉山が低いと、おこっただいだらぼっちが、こもをほうりなげると、こぼれた土が山に。それが館山寺の大草山という。まだ腹の虫がおさまらないだいだらぼっちが、ついでに、もう片方のこもを右足でけりあげ、こぼれた土を、「このやろう、このやろう。」とじだんだふんで悔しがった。あまりにふみ続けたものだから、広い広い原っぱに。それが三方原台地。
このだいだらぼっちは、あぐらをかくと、四キロ四方が足の下にめりこみ、立つと、頭は雲の上につきでるほどの大男。