がいとうの ひっこし/山田彩央里・作 山田和明・絵/イマジネーション・プラス/2024年
今ではやや古めかしく、あちこちでじゃまものあつかいの街灯が、居場所を探していきますが、なかなか居場所が見つかりません。
街をあちこちあるき、ようやくさびれた暗い広場のベンチの隣にたどりつきました。そこへ、悩みや疲れた人がベンチに座り、明かりに照らされて、もういちど頑張ってみようと立ち去っていきました。
いえにかえっても、そとにでかけても はなしあいてのいない、ひとりぼっちのおじいさんは、「まるで だれかが はなしを きいてくれるようだ。またくることにしよう」といいながら、かえっていきました。
ベンチも、「ここにはね 誰もゆっくり すわって いったことがないんだ。今夜はよく人がくるよ。ねえ これからも ここにいてくれよ」
暗い中での明かりは、心もてらしてくれる存在。どこもかしこも明かりだらけで じゃまものにされた街灯がみつけた 最高の居場所でした。ただ、街路灯だけだと、人は多分通り過ぎるだけ。ベンチがあってはじめて なりたつ空間だったのでしょう。
ところで、わたしのすんでいる小さな街では、シャッター通り商店街で、あいていたとしても閉じるのが早く、ちょと裏通りに入ると真っ暗。とくに日が暮れるのが早い冬場には、人通りも少なく 寂しい感じ。こんな中で、数少ない街灯の明かりを見つけると、それだけで ほっとします。
山田彩央里さんのはじめての絵本とありました。なじみのない出版社の絵本ですが、会社の理念は、「イマジネイション・プラス の社名は「想像力」に何かをプラスしていけたら、という意味です。
子どもたちの「無限大の想像力」 にプラスするものは「絵本」かもしれませんし、「音楽」「絵画」「生き物」あるいは「自然」「普段の生活」といったものなのかもしれません。
そのような多様な「何か」をプラスして「おもいやり」「やさしさ」のような気持ちに結びついて欲しいと思っております。そしてそのような気持ちがきっと争いのない平和な世界にもつながっていくと信じて出版の活動をしてまいります。」とありました。