ダイアナと大きなサイ/エドワード・アーディゾーニ・作 あべ きみこ・訳/こぐま社/2001年
日本では2001年に出版されていますが、原著の出版は1964年。そのせいかもしれませんが、数少ないカラーページは淡く、白黒の線画もとても落ち着いた感じです。
ある冬の夕方、ジョーンズさんの家で、ジョーンズさんとおくさんと娘のダイアナが、居間でくつろいでいると、ドアがゆっくりあいて、角に、あかちゃんのうわぎを まいた大きなサイが、あたまをつきだしました。
あわてた両親でしたが、ダイアナは、サイが風邪をひいているのに気がつき、暖炉のそばに ねかせると、風邪薬をひとびん、ねつさまし200粒を全部のませると、バターつきのトーストを何枚も食べさせます。ジョ-ンズさんのおくさんは、やたらと薬を買い集めていましたから薬はいっぱいあったのです。
隣にはあかちゃん。このあかちゃんも、もののわかったあかちゃんで、おくさんが大騒ぎするのもふしぎにおもっていました。
ジョーンズさんが、あちこち電話すると、サイは動物園から逃げてきたのがわかり、銃を持った3人の男があぶないからと射殺にやってきますが、なんとダイアナはサイと一緒に暮らすつもりと、説得しようとした男たちの前に立ちはだかります。
それからサイは物置で夜ねむり、はれた夏の日は庭の花壇のあいだを散歩しました。
ジョーンズさんは自慢の庭をあらされ、ダリアの花がサイに食べられてしまうので、はらがたちましたが、まだちょっとサイが怖くて、やめてくれとはいえませんでした。それでもお友達をお客に招いては、窓からサイを見物するのでした。
ジョーンズ家のあかちゃんは、やがて立派な青年になり、結婚して自分の家庭を持ち、子どもとダイアナにあいにきては、サイと遊びます。大人は心配しましたが、子どもたちはサイと遊ぶのが大好き。サイもとてもおとなしく、子どもを こわがせることは まったくありませんでした。
ダイアナとサイもおなじように年を取り、ジョーンズさん夫婦が海のそばの小さな家に引っ越しすると、古い家にはダイアナとサイだけ。
そのあとも、サイの具合が悪いときは風邪薬をのませると、かならず元気になり、バター付きトーストを食べ、外がさむいときは、暖炉のそばでねむります。
ダイアナもサイもおばあさんになりますが、ふたりのあいだには、ゆったりと時間がながれていきます。
年をとり白い服を着たダイアナが、白いサイと一緒に歩いている最後の余韻がなんともいえません。
サイとのくらしで大きな事件が起こるわけではないのですが、幸せの形も人それぞれ。最初の出会いが、その人の一生を左右するのかも。