どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

かあさんは どこ?

2022年05月30日 | 絵本(社会)

     かあさんは どこ?/作・クロード・K・デュポア 訳・落合恵子/ブロンズ/新社2013年

 

 昼間と夕暮れがかさなるころ、突然の砲撃。すぐ近くに爆弾が落ちてきた。恐ろしい音がより大きくなって、もっと大きくなってどんどん こっちにきた。

 その子は家を目指して 帰る。かえらなきゃ! たどり着いた家は めちゃめちゃ。だれもいない。にげなくちゃ!

 とつぜん その子は、大きな手につかまれ、ひっぱれながら はしった。

 知らない人たちの なかに その子は ひとり。まわりは 傷ついた人が。

 かあさんはいない ともだちもいない。

 しらない女の人に だきよせられ

 兵隊に つれていかれ ほかの子と 水をくむ仕事をさせられた。その兵隊たちも ちりぢじりに 逃げていき・・・。

 おおぜいの避難民の 小さな子をだいた おばあさんに 手を引かれ 

 歩いて 歩いて・・・・

 さむさに ふるえる ながいよる 川をわたり 歩いて 歩いて・・

 

 絵本にしては、分厚いのですが、はじめからおしまいまで、スケッチ風の白黒タッチで、その子を描いていきます。それは、まるで「かあさんはどこ?」と さがしまわるその子の心の叫びです。

 最後に その子は、かあさんに あうことができるのですが・・・。

 

 二次大戦中の作者の一家の体験が背景となって生まれたとありました。作者の母親は、家の中で、兵隊から頭に銃をつきつけられ、いまにも引き金をひかれそうになったときの恐怖から生涯解放されることは、なかったといいます。

 ロシアのウクライナ侵攻から三か月。ウクライナにとっては自衛のための戦争ですが、ロシアは侵略国。ロシアは自国での被害はほとんどありませんが、ウクライナでは住宅、病院のほか学校まで爆撃され、子どもは学ぶことも遊ぶこともできなく、地下シェルターで暮らすことも。

 シリア、アフガニスタンをはじめ、あちこちで頻発する内戦で避難せざるをえない子どもも。

 落合さんがいわれるように、いまもなお、地球のどこかで、子ども時代をうばわれている子どもがいます。


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