徳島のむかし話/徳島県教育会編/日本標準/1978年
むかし、千のことを言ったら、そのうち三つぐらいがほんまで、あとの九百九十七まで、うそばっかしという、うそつきじいさんがいて、近所の人も、親戚、家の者まで、このおじいさんのいうことは信用しなかった。
このおじいさんも、とうとうときがきて、死に際になった。おじいさんは、「今までうそばかりついてすまなんだ。けれど、死に際にいっておく。これはほんまじゃ。わしが死んだ十年たったその日に、この部屋の床の下をほってみてくれや。壺が出てきて、なかに宝物が入っている。みんなでわけてくれや」と言った。
みんなは、なんぼうそつきじいさんでも、死ぬときにはやっぱりほんまをいうもんじゃと、みなこれだけは信用した。
さて、十年たった命日に、みんなが集まり、床の下をほってみると、たしかに壺が出てきた。「やっぱり、これだけはほんまじゃった。」と、壺をあけてみると・・・。
嘘も方便、人間関係の潤滑油にもなりますが、今のご時世、危うい嘘が多くありすぎ・・。