鹿児島のむかし話/鹿児島のむかし話研究会編/日本標準/1975年
日本の昔話では、オオカミより雨漏りが怖いというのが一般的ですが、イノシシがでてきて、イノシシより 雷さまが怖いという話。
ある晩、いなびかりがして、かみなりがどんどんなりだし、じさんとばさんは、ふとんのなかにくるまって、小さくなっておった。さらに、カヤでつくった家の壁にガサッ ガサッとつかかるもんがあった。ばさんが雨戸の隙間から、そーっと見るとイノシシの親子が、壁をやぶって家の中に入ろうとしているので、ばさんは 大慌て。ところが、じさんは、「おれは、イノシシより、雷さまが何倍もおそろしかが。」と、ふとか声で答えると、イノシシのほうが驚いて、逃げていってしまった。
ばさんがじさんに、「じいさんのひとことでイノシシがにげていったが、じさんな頭がよかかなあ。あたや、みなおしもしたがお」というと、じさんは、「それほどでもなかど、ばあさん」と、こたえるあたりが ほほえましい。