子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎編/実業之日本社/1964年
どんなすばらしいごちそうよりも、はちみつの好きなキツネがいました。はちみつをさがして、ミツバチの巣箱へちかづきましたが、ミツバチにみつかって、めちゃめちゃに刺されてしまいました。やっとのことで、逃げ出したキツネでしたが、どうしてもはちみつのことが忘れられません。
「クマさんといっしょにくらせばいいわ。クマさんも、はちみつがすきだから、きっと どっさりをもっているにちがいない」と、いっしょに暮らすことになりました。
クマは、毎日、森へ狩りにっておいしいご馳走を、キツネに食べさせてくれました。クマの奥さんになっていたキツネは、朝から晩まで、はちみつのことを考えていました。ある日のこと、はちみつをねだると、クマは、村へ出かけていって、大きな巣箱を二つも、かついでかえってきました。ひと箱食べて、もう一つは冬のためにとっておこうと、クマは巣箱の一つを、屋根裏にかくしました。
ここからクマをだまし、はちみつにありつくキツネのたくらみがはじまりました。
クマに気がつかれないように、しっぽで壁をたたき、坊やが生まれたお祝いに、お客さんに呼ばれたといい、屋根裏のはちみつを たっぷりなめました。昼寝からおきたクマが、赤ん坊の名前を聞くと、「たべはじめ」とこたえました。このやりとりが三回。二回目に、「たべてるとちゅう」、三回目は「ひっくりかえして、なめちゃった」という名前。
クマが、はちみつが欲しくなって、屋根裏へ行くと、巣箱は からっぽ。クマは、かんかんに おこって キツネを くいころそうとすると、キツネは どこかえいってしまいました。
戦争が続くウクライナ。今日で807日目。子どもたちが、こころから、お話しを楽しめるのはいつのことでしょうか。連れ去られた子どもたちは?