どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

スイッチョねこ

2024年07月04日 | 絵本(日本)

   スイッチョねこ/大佛次郎・文 朝倉摂・絵/青幻舎/2022年

 

 大佛次郎といえば、古い世代は「鞍馬天狗」ですが、子ども向けのものを書いているのをことをしってびっくりでした。

 1975年フレーベル館から「安秦」さんの絵で発行されていますが、青幻舎版は、朝倉摂さん生誕100周年記念として発行されたもの。フレーベル館のものの記憶がある方も多いようです。

 秋がきて、庭でいろいろな虫がなきはじめました。夏に生まれたいたずらな子猫のしろきちは、「あんないい声をしている虫だもの。きっと食べてうまいにちがいない」と かんがえていました。お母さんから、あたって。おなかをわるくする虫もいますからねと注意さてていたのにもかかわらずです。

 しろきちは、なんども虫をねらっていましたが、なかなつかまりません。大きくあくびをしたとき、あいた口の中に なにかとびこんできました。しっかりねこんだと思ったら、お腹の中でスイッチョ!と、虫が なきはじめました。それから、しろきちが。はしりまわったり、じゃれてあそんでいりあいだは、だまりこんでいるのですが、すこししずかにしていると、ふいに大きな声でスイッチョ!となきたえます。

 きょうだいから「やかましい」といわれ、つらくなるしろきち。顔を洗うひまもありません。お医者さんから、切開手術して、スイッチョをつまみだすかね、といわれ・・・。

 

 文章は長め。旧版はひらがなばかりといいますが、新装版では漢字も使われています。猫のいきいきしたようすが 楽しめます。

 スイッチョと鳴くのはウマオイといいますが、あまりなじみがありませんでした。


井戸の茶わん

2024年07月03日 | 絵本(日本)

    井戸の茶わん/川端誠/ロクリン社/2023年

 

 くず屋の清平さんはまがったことは大嫌いで、正直者。その清平さんが 長屋で出会った 千代田朴斎という貧乏暮らしの浪人から、200文で売れればと、仏像をあずかりました。

 この仏像を300文で買ったのは、細川さまの家臣、高木作之進。作之進が仏像をみがくと、なんと紙にくるまった50両の小判。
 お供の良助が「これはすごい。もうかりましたね」というと、作之進は、「馬鹿をもうせ、せっしゃは、仏像はかったが、小判はかっておらん。おそらく、この仏像の持ち主のご先祖が、子孫が困ったときに、これをつかえといれたのを、それにきづかずに てばなしのだろう。かえさねばいかん」と、くず屋を探し出します。

 小判を元の持ち主にかえしてもらいたいいわれ、清平さんは、長屋の朴斎のもとに、持参しますが、「はじめから、わしには縁のない金で、それは、仏像を買った人のものだ」と、受け取りません。両方が言い分を曲げず、武家屋敷と長屋を いったりきたりの清平さん、まるで仕事になりません。長屋の大家さんの仲介で、10両は、くず屋、残りをふたりでわけるこことになりますが、朴斎は、まだ頑固で うけとりません。今度は、清平さんの仲介で、朴斎は、古茶わんをあげることで、20両をうけとりました。

 ところが、この古茶わんは、300両はするという名品中の名品「井戸の茶わん」とわかり、またまたひと悶着。

 朴斎さん、あいかわらず150両はうけとらないといいますが、ここでも清平さん、「また、なんかさしあげて、これうけとってください」といいます。しばらく考えていた朴斎さん、相手が独り身と聞いて、娘をもらってくれるなら、支度金として150両をもらおうといいだしました。

 作之進も、「今度のことで、立派な方だとわかる。その娘さんなら、まちがいなかろう。ありがたく、よめにきていただくことにしよう」と、縁談話は無事まとまりました。

 ここで清平さん、「いまは、長屋ずまいで、きている着物も、よれよれですが。ちゃんと、みがいてごらんなさい。それはそれは、うつくしくなりますよ」と、いいますが・・・。

 

 千代田朴斎、高木作之進が角を突き合わせていたらどうなっていたやら。これは、両者のあいだにたった清平さんのお手柄です。

 とにかく、真っ正直で、曲がったことは大嫌い。筋の通らないことには納得できない人ばかりがでてきて 爽快感がのこる話。ちょっと残念なのは 娘の扱い。「落語絵本」は24ページだったのを今回32ページとページ数を増やしたといいますが、もうすこし娘の存在感があればいうことなしでした。それにしても、娘の結婚話、本人の了解をえたのやら。

 何人も、くず屋がでてきて、江戸のリサイクル事情もうかがえました。


小さなプランクトンの大きな世界

2024年07月02日 | 絵本(日本)

   小さなプランクトンの大きな世界/小田部家邦・文 高岸昇・絵/福音館書店/2016年(1996年初出)

 

 「池の水の中をただよっている小さな生き物を、まとめてプランクトンとよんでいます。」とあって、あれ海は?と思っていたら、海水には塩分があるので違う種類のプランクトンがいるといいます。この絵本では、池の水、ガラスの花瓶、二か月間庭におきっぱなしにした水道水など。

 でてくるわ でてくるわ。イタチムシ、ツリガネムシ、ハオリ・ワムシ、コマガタ・ゾウリムシ、アクチノフリス、サヤミドロ、クンショウモ、アオミドロ・・・。これに海のプランクトンをくわえたら いくつになるやら!

 プランクトンは、鳥の足や、くちばし、羽について移動し、乾燥して水がなくなるまえに、また水のあるところにとびこむプランクトンも。水が生命をはぐくんできたのを実感。

 一ミリミリ以下の顕微鏡で見ないとわからない世界。そういえば、小学生のころも顕微鏡をのぞいたことがなく、子どもにも買ってあげたことがない。顕微鏡があれば、プランクトンだけでなく、そのほかの不思議な世界をのぞくことができたはずで、子どもの成長にも、いかせたのではないかと後悔しました。

 作者の方は、警視庁科学捜査研究所で、検査鑑定をされていたかた。2015年で、観察歴70年とありましたから、こんな世界の魅力にはまっていたようです。
 作者が一番好きというヒラタヘゲマワリが何十、何百と いっせいにダンスしているところに出会うと、うっとりして、時のたつのも忘れてしまうというのも印象に残りました。

 絵は描いたもので、写真よりもっと特徴を示すことができたのでしょうか。


おひゃくしょうさんと だんご

2024年07月01日 | 紙芝居(昔話)

   おひゃくしょうさんと だんご/作・こわせ たまみ 絵・村田エミコ/教育画劇/2009年(12画面)

 
 スリランカといわれなければ、日本の昔話と勘違いします。
 
 隣の村で暮らす娘のところで、おいしいだんごをたべたお百姓さんが、帰る途中で石に足をぶつけ、だんごという名前を忘れてしまいました。
 
 おかみさんに だんごをつくってもらおうとしますが、”だんご”がいつのまにか”あいたった”になって、けんかになってしまいます。怪我の功名で、おかみさんの たんこぶのおかげで あまーい こめの だんごっこが 五つできますが こんどは、だんごの分け方で ひともんちゃく。
 
 先に口をきいたほうが負けで、勝ったほうが だんごを 全部ものにする我慢比べがはじまりました。夕方になっても夜になっても ふたりは だまったまま。
 ねずみがでてきて、だんごをさらっていこうとして、お百姓さんのそばにあった棒を押し倒し、その棒が お百姓さんの足にたおれ、たまらず「あー まいった こーりゃ あいたった!」と、さけんでしまい、だんごはすべて、おかみさんが 食べてしまいます。
 
 
 日本の昔話では前段だけというのが多く、あまりぱっとしないむすこがでてくるよりは 受け入れやすい。また後段だけという話も数多い。
 白黒の版画で、夫婦の大きく描かれた顔が、お話の世界にぴったり。
 
 
・五つのだんご(アジアの昔話6/松岡享子・訳/福音館書店/1981年初版)

 紙芝居のもとになったと思われる話。

 我慢比べの最後で、二人が墓穴に葬られようとしたとき、穴を掘るのに使ったシャベルが百姓の足のつま先にあたって、痛みをこらえきれずき大声をあげてしまうところで決着がつきます。そりゃあないよという場面がいくつもでてきまが、それにして墓穴まででてくるとは!。


 スリランカでは26年にわたる内戦が続いていたといいます。1983年から2009年までスリランカ政府とタミル・イーラム解放のトラ (LTTE) による内戦で、つい最近のことです