母子家庭、中3から認知症の祖母を世話、学校ではくたくた「介護との両立無理」
毎日新聞2020年3月21日 18時02分(最終更新 3月21日 20時49分)
社会一般
介護・福祉
ヤングケアラー
男性がつけていた介護の日記。祖母の容体や自身の心境が生々しくつづられている=東京都千代田区で2020年3月17日(画像の一部を加工しています)
10代の介護する子ども(ヤングケアラー)の規模が毎日新聞の「オーダーメード集計」で初めて明らかになった。当事者たちに話を聞くと、介護で学業もままならず、将来の可能性を擦り減らしてしまう深刻なケースも多い。統計の数字からだけではうかがえない実態に光をあて、救済や支援の仕組みを作る必要がある。【向畑泰司、田中裕之】
「学校と介護の両立は無理だった」。仙台市の男性(31)は中学3年から23歳まで認知症の祖母を介護した。母子家庭で母親が家計を支え、男性が祖母の世話をした。祖母は連日深夜まで妄想や徘徊(はいかい)を繰り返し、男性は体調を崩してやむなく高校を退学した。
ひとり親家庭の増加などから、ヤングケアラーが介護の中心的な役割を担わされるケースは多い。
物忘れ程度だった祖母の症状は、男性の中学時代に悪化。高校に入ると「お金を盗まれた」「周りから悪口を言われる」と妄想が始まった。夜9時から午前2時ごろまで「デイサービスに行きたくない」と激高する祖母をなだめ、3時ごろに就寝。2時間おきのトイレにも付き添い、朝にくたくたでデイサービスへ送り出す日々が続いた。徘徊も始まり、目が離せなかった。喉に詰まらせないよう朝夕は刻み食を作った。
通学するヤングケアラーは過度な負担から学業に支障をきたしかねない。周囲にもなかなか事情が伝わらず孤立しがちだ。
学校ではぼーっとして体が熱く、授業中の居眠りが続いた。「今思うと二日酔いみたいな感じ」。突発性難聴も起きた。自宅での勉強も難しく、試験の成績は180人の学年で入学時の50番台から、2年生になると160番台まで落ちた。
午後4時ごろにデイサービスから帰る祖母のため、放課後は急いで帰宅する。せっかく入った弓道部は休みがちに。クラスの話題についていこうと携帯で流行をチェックしたが、結局、同級生との付き合いを避けるようになった。
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