安全な会食へ試行錯誤 「ウィズマスク」提案も 流行長期化で対策急務に 「スクランブル」
新型コロナウイルスの流行長期化が確実視される中、会食時の感染防止策が重要性を増している。集まることを断念せずに食事や会話を楽しむ方法はないか。マスクを着けて参加する"ウィズマスク"の提案もされるなど、安全な会食を目指して試行錯誤が続く。
ウイルスは会話などの際に感染者の口から飛び散る小さな粒子、飛沫(ひまつ)に含まれる。感染症に詳しい東北医科薬科大の賀来満夫(かく・みつお)特任教授は「飛沫感染が感染経路の6~7割を占める可能性もある」とみる。
飛沫のリスクはマスク着用で下げられるが、飲食時は外す。そのまま同席者と話せば飛沫が飛び交うのは避けられず、実際、会食での感染は後を絶たない。
一方で飲食店側には「どのような対策がよいか分からない」との悩みがある。そこで順天堂大の谷川武(たにがわ・たけし)教授(公衆衛生学)のチームは新たな指針作りに乗り出した。東京・銀座で7月にさまざまな形態の飲食店を調査したところ、マスクを外した客らが近くで談笑したり喫煙したりする、感染リスクの高い行動が多くみられた。
観察からチームは、マスク、喫煙、換気、手指消毒の4項目がポイントだと分析。人前での喫煙は避け、会話の際はマスクを着けるなどの新しい常識に沿った取り組みが必要と指摘する。谷川教授は「マスクをずらして飲食し、会話の際に再びマスクを着けるのも一つの方法だ」と話す。
大分県は5月、酒造組合と協力して、新しい飲み会の在り方を探るための実験をいち早く試みた。食べる時だけマスクを外す、横並びに座るといった多様な防止策を取って飲食する職員有志の姿が広く報道された。
県には「今後も継続に期待」「こんなことをしてまで飲みたくない」など賛否両論の反響が寄せられたが、商業・サービス業振興課の担当者は「まずは県が突破口になればと実施した」と話す。
ファミリーレストランのサイゼリヤは、マスクに紙ナプキンを引っ掛けて口の前に垂らし、ナプキンの下から食事をする方法を提案。「できるだけ口の近くで飛沫を受け止め、飛散を防ぐ方法を考えた」と、外食を楽しんでもらうための模索を説明する。
東京医療保健大の菅原(すがわら)えりさ教授は、こうした多様な取り組みについて「皆で知恵を出し合って方法を探っていくことは有意義だ」と受け止める。ただし「まず食事に集中、終わったらマスクを着けて静かに会話するのが原則」と話し、飲食の場でのマスクの着脱については「外し方が大切。表面は触らず、置くときも袋に入れて」とアドバイスしている。