無症状者の6割が入院後発症 新型コロナ、重篤化や死亡例も
2020年9月4日 (金)配信紀伊民報
和歌山県内で発生した新型コロナウイルス感染者で、当初無症状だった人のうち、6割が入院中に発熱やせきなどを発症していたことが、県のまとめで分かった。重篤化や死亡に至ったケースもあり、県福祉保健部の野尻孝子技監は「症状がないからといって安心してはいけない。急激に悪化する事例もあり、(陽性者全員)入院治療の上、経過を観察すべきだ」と話した。
県が8月末までに陽性が判明した230人について分析し、2日公表した。陽性判明時に無症状だった52人のうち、退院まで無症状だったのは38%の20人。残り62%の32人は入院中に症状が出たという。軽症は21人、肺炎は9人、重篤、死亡が各1人だった。
一方、政府は医療関係者の負担軽減のため、無症状と軽症者について、宿泊施設や自宅での療養を徹底させる対策を公表した。しかし、県では従来通り、陽性者全員入院の対応を継続するとしており、仁坂吉伸知事は1日の記者会見で「初めから第一義的に宿泊療養や自宅療養をやる必要はない。原則にしては絶対にいけない」と反論している。
このほか、県の分析では、県内でも年代が若いほど症状が軽い傾向であることが分かった。重症度を年代別に示したところ、20歳未満(31人)は無症状19%、軽症74%、20代(75人)は無症状12%、軽症72%、30代(19人)は無症状ゼロ、軽症63%、40代(25人)は無症状5%、軽症30%などとなっている。
死亡は80代以上(11人)が18%、70代(7人)が14%、60代(22人)が5%。野尻技監は「幸い70代以上の症例は本県では少ないが、死に至る事例もあり、高齢者は注意が必要」とした。
■ウイルスは別由来 田辺の飲食2店舗
県は、これまでの県内の集団感染事例についての分析結果も公表した。田辺市のダイニングバーと食堂では、同時期に集団感染が発生したが、国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターに遺伝子の分析を依頼した結果、別由来のウイルスであることが分かった。
ダイニングバーでは経営者や従業員、来店客、その家族らの感染が確認されたが、無症状者からクラスター(感染者集団)につながったと分析。狭い部屋でのカラオケや飲み会は感染の危険性が特に高くなるため、注意が必要だとした。
また、来店者を通じて、上富田町の医療福祉施設に波及した可能性を指摘。施設では、複数の感染者が出たが、入所者は個室だったために感染拡大は抑えられたとみている。
一方、田辺市の食堂でも、経営者や従業員と、その家族や親族らの感染が分かったが、来店客からは感染者は確認されなかった。県は、換気や座席の配置などの感染予防ガイドラインを順守していたことや、従業員との接触時間が短かったためなどと分析している。