新型コロナ 容疑者感染、対策に苦慮 各地の留置場で問題化 府警、逮捕一時見送りも /京都
府警が労働者派遣法違反の疑いで逮捕状を取った容疑者宅を家宅捜索したものの、容疑者が新型コロナウイルスに感染していることが分かり、逮捕を約3週間見送っていた。捜査関係者への取材で判明した。各地の警察で勾留中の容疑者の感染が確認され、留置場が一時閉鎖されるなど感染拡大が問題化しており、府警も対策に苦慮している。【千葉紀和】
府警組織犯罪対策2課は9月、許可を受けずに派遣会社を作り、京都市中京区の風俗店にホステスを派遣し接客させたなどとして、男女計2人を同法違反容疑で逮捕した。
うち風俗店経営の女(33)について、8月17日に逮捕しようと捜査員が京都市下京区の自宅に赴いた。しかし微熱があったため、事情を聴いたところ「コロナに感染している」と説明。PCR検査を受けさせると陽性と出たため、この日の逮捕状の執行を見送った。
女は自宅待機となり、約3週間後の9月8日に逮捕。逮捕後のPCR検査では陰性と確認された。知らずに家宅捜索した捜査員7人が接触したが、検査で陰性だったという。
警察施設での感染は各地で問題化しており、警視庁では4月、渋谷署の留置場で収容者が感染し、留置場が一時閉鎖された。沖縄県警では8月、那覇署の留置場で勾留中の男の感染が確認され、濃厚接触の可能性があるとして署員ら約30人が自宅待機となった。
留置場は密閉空間で集団感染のリスクが高く、警察庁は都道府県警に対し、留置場の収容を「可能な限り1人1部屋とする」と指示。日本弁護士連合会は「可能な限り逮捕を回避し、勾留中の容疑者も釈放するなどして在宅で捜査すること」を求める会長声明を出している。
ただ、容疑者の逮捕時などの感染対策は決め手がないのが実情だ。府警は今回、「逮捕してもコロナに感染していると後が困る。家宅捜索で必要な証拠は押収しており、逮捕を一時見送っても罪証隠滅の恐れはないと判断した」と説明。「今後も事例ごとに適切に対処したい」としている。
〔京都版〕