新型コロナ 致命率低下 「治療手順確立が奏功」 「第2波」渦中、臨床医が実感
2020年9月23日 (水)配信毎日新聞社
新型コロナウイルス感染症の6月以降の「第2波」が一定の落ち着きを見せる中、春先の「第1波」に比べて死者数は減り、確認された感染者に対する死者の割合(致命率)は低下している。これについて、これまで多くの新型コロナウイルス感染症の患者を治療してきた国立国際医療研究センターの忽那(くつな)賢志医師が毎日新聞の取材に応じ、「検査対象が広がり軽症や無症状者をより多く確認できたことが一番の要因」とした上で、「第1波に比べて治療の手順がある程度確立したのは非常に大きい」と語った。
忽那医師によると、同センターの病院では6月以降、約10人の患者が重症化。現在入院中の患者もいるが、全員が人工呼吸器を外すまでに回復したという。中等症や重症患者への治療について、5月上旬に国内で特例承認された抗ウイルス薬レムデシビル(商品名ベクルリー)とステロイド薬デキサメタゾン、血液の凝固異常を防ぐ抗凝固薬ヘパリンの3剤を併用することが定型の手順となり、「効果が出ている印象がある」とした。忽那医師は「第1波なら人工呼吸器を挿管することになった容体の人も、第2波では挿管を回避できるケースが増えたと実感している」と話した。
ただ、致命率の低下はウイルスの弱毒化を示しているわけではない。忽那医師は「本来の感染症の姿が見えてきただけ。感染すると誰でも重症化する可能性がある感染症なので、感染予防対策は続けていく必要がある」と指摘。秋冬のインフルエンザとの同時流行を見据え、「今年は特にインフルエンザワクチンを打ってほしい」と呼びかけた。
厚生労働省の「アドバイザリーボード」に提出された資料によると、国立国際医療研究センターのデータベースに登録された全国の入院患者約6100人(9月4日時点)のうち、入院後に死亡した人の割合は、6月5日以前と比べ、6月6日以降の方がいずれの年代でも低くなっている。入院時に重症だった患者が死亡した割合は、70歳以上では6月5日以前が31・2%だったのに対し、6月6日以降は20・8%だった。【金秀蓮、谷本仁美】