県、取り組み奏功
悩み対応する人 養成/長時間労働など改善
県が長年取り組んできた自殺対策の効果が表れてきている。県内で昨年、自殺で亡くなった人は110人と10年前から半減。全国上位だった人口10万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」も、近年は全国平均の水準まで抑え込んだ。ただ、新型コロナウイルス禍による心身の不調や経済的苦境による自殺も危惧され、県は「身近な人の変化に気づき、手を差し伸べて」と呼びかける。(林興希)
県によると、県内の自殺者は1996年に年間200人に達して以降、2009年まで200人台で推移。233人が命を失った07年の自殺死亡率は32・1人(全国24・4人)に上り、全国でワースト5位だった。一時的に低下した年を除き、全国的にも高水準で推移したが、理由ははっきりしていないという。
危機感を強めた県は07年度、「県自殺総合対策連絡協議会」を設立。官民の連携を強め、自殺死亡率を5年間で全国平均まで下げるという目標を掲げた総合計画を策定し、本格的な対策に乗り出した。
啓発活動の強化や、悩みを抱える人のサインに気づき、適切な対応ができる「ゲートキーパー」の養成などに力を入れてきた。遺族の感情に配慮し、県が13年に「自殺」を行政文書上で、「自死」と言い換えることにしたのも、全国初の試みとして注目された。
こうした取り組みの結果、県内の自殺者は年々減少。全国的な減少傾向で、自殺死亡率の都道府県別順位は依然として高かったが、17年には、16・7人(全国16・4人)でワースト24位にまで低下した。以降、18年は16・1人(同16・1人)で25位、微増となった19年も、16・5人(同15・7人)で19位となっている。
県が18年に改定した総合計画には、職場での過労などを理由とした自殺を防止するため、職場での長時間労働の是正やメンタルヘルス対策を加えた。島根労働局と連携して労働環境の改善に取り組み、企業向けへの周知も進めている。
一方、警察庁の統計によると、県内では今年も8月末現在、71人(速報値)が自ら命を絶っている。県障がい福祉課は「コロナ禍の影響で不安を抱えている人も多いはず。相談窓口の啓発を進め、命を落とす人を減らすことができるよう呼びかけたい」とした。