追加検査、まん延防ぐ 1例目確認の研究者 見逃せば欧州並み拡大も
2020年11月30日 (月)配信共同通信社
今年1月に国内初の新型コロナウイルス感染者を検査した国立感染症研究所の松山州徳(まつやま・しゅうとく)ウイルス室長が28日までに共同通信のインタビューに応じ、初回検査では陰性だったが、開発中だった手法で念のため追加検査した結果、かろうじて発見できたことを明らかにした。国内1例目の確認時の詳細が明らかになるのは初めて。
当時、中国以外で新型コロナの感染者が見つかった国は、日本がタイに次いで2番目だった。追加の検査がなければ日本への流入確認が遅れ、欧州のように2月ごろからまん延していた恐れがあると松山室長は指摘する。
1例目となった日本に住む中国人男性は、新型コロナの発生地である中国・武漢市から今年1月6日に帰国。現地では家族とともに両親などの家に滞在しており、滞在中から発熱があった。帰国後に病院を受診したところ肺炎を確認。管轄する保健所から連絡があり、15日夜に検査で陽性が確定した。
松山室長などによると、連絡を受けて検査を始めたのは14日夜。15日早朝に得られた結果では陰性で、厚生労働省にも経過を報告した。
ただ男性の状況から感染がかなり疑わしかったため、最初の検査で遺伝子を増やしたものを検体として使うという手法で追加検査した。その結果、ごく微量の遺伝子の検出に成功し、公開されていた新型コロナの遺伝子情報とも合致した。
詳しく調べると、検体に含まれていたウイルス量がきわめて少なかったことが判明。松山室長は「非常に困難な検出をやった」と話した。
男性の実家では父親も発熱しており、男性の妻らにも症状がでていた。状況から父親からの感染も考えられると感染研は推定。父親からうつったとすれば、昨年末の段階で、すでに武漢で市中感染が起きていた可能性があるとしている。