「助かる命も助からぬ」 重症患者満床の近大病院長
新型コロナウイルスの感染急増が続く大阪府で、重症患者を受け入れる近畿大病院(大阪府大阪狭山市)の東田有智(とうだ・ゆうぢ)病院長が9日までに共同通信の取材に応じ、11月下旬以降はほぼ満床状態が続いていると明らかにした。感染者がさらに増えれば他の傷病患者の治療に支障が生じ「助かる命も助からなくなる」と窮状を訴えた。
同病院は8日時点で重症者向けに10床を用意しているが、新規感染者の受け入れが途切れることはないという。交代制で治療に当たるのは医師3人と看護師約30人。熱がこもる防護服を着け、人工呼吸器の管理など慎重さを要する作業に24時間従事する現場の苦労を「使命感でやっているが、ゴールが見えない。限界が来ている」と語った。
府内の医療体制は急激に逼迫(ひっぱく)しており、すぐに使える重症者病床の使用率は80%を超えた。府は7日、近畿大など五つの大学病院に対し、追加で病床を確保するよう緊急要請したが、東田病院長は「マンパワーを考えると既にぎりぎり。増床するなら一部の機能を止めないといけない」と苦渋の表情を見せた。
冬場は他の疾患も重篤化しやすく、脳梗塞での入院は既に想定を上回る人数で推移する。同病院は地域医療のとりでとなる「3次救急」に指定されているため「診られませんとか、他の病院にと言うことはできない。コロナ患者があと1人か2人増えれば(救急を続けるため病院機能のどこかに)犠牲が生じてしまう」と危機感を募らせる。
感染拡大を止めるには人の移動を減らすしかないと強調。政府の「Go To キャンペーン」などは世代を問わず、いったん停止すべきだと主張する。「いま自粛すれば医療崩壊寸前のところで何とか歯止めがかかる。感染抑止に集中すべきだ」と語気を強めた。