紀の川、有吉佐和子さんは読んだことがなかったので楽しみでした。
紀の川は昭和30年代に書かれたようです。
話は日清日ロ戦争の頃から始まります。
主人公の花は、庄屋さん(地主階級)の娘に生まれ、紀ノ川の下流にあたる六十谷に嫁ぎ、そして母親になり、娘の文緒を生み、孫の華の代までのお話です。
いわば「女の一生3代記」と言ったところです。
今でこそ日本人の平均寿命は80歳を超えているが、当時は50歳あたりだった。
江戸時代以前からの家、村、慣習の世界が、明治維新によって壊されていく。
その中で生き続ける女(花)の一生といったところ。
日清戦争や日ロ戦争では日本の世相はかわらなかったが、先の第二次大戦の敗北でガラッと世の中が変わった。
価値観が変わったのだ。
家から個人へと事の単位が変わった。
主人公の花は和歌山を流れる紀の川に生まれた。
花は昔からの言い伝えで「嫁入りは、紀の川に沿うて行くもんや、紀の川の流れに逆ろうて嫁入りしちゃあかん」と言うわけで、紀の川の下流の六十谷の名家に嫁いだ。
花の子供の文緒は、そんな花の古くからの慣習に反発して、新時代の女として生きようとしていた。
ちょうど、大正モガが沸き起こってくるころだろう。
文緒は紀ノ川では新時代は生きられないと東京へ出た。
花は大地主で豊かだったので、遠くに住む文緒に乞われるだけ送金していた。
文緒は銀行員と結婚して華を生む。
文緒は海外を転勤して海外の息吹を謳歌していた。
文緒の子供華は、新時代をあまりにも標榜する母の文緒に反発して、反対に祖母の花になついていった。
花は家とか土地、古くからの習わしを大事にしていた。
地に足がついていたのだろう。
花の思いは隔世して華につながった。
結局は、女の思いは綿々と繋がっていく。
と言う大雑把なストーリーだ。
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花から文緒を超えて華に繋がる。
女の系図が出来上がる。
戦争時の疎開先は女親のほうに逃げ込むことが多い。
もしかしたら、古来から現代まで日本は女系社会なのではと説いている。
生きることは、時代時代に反発したり、うまく立ち回ったと思っていても、時代に翻弄される。
おそらく、自分の分と言うものが、いくらあがいてもあるのだろう。
有吉佐和子の描く女の一生は壮大だった。
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