ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

ブニュエル 皆殺しの天使

2018年06月23日 | 映画


ブニュエルの「皆殺しの天使」(1962)を見る。予備知識なしで見たのだが、想像してたのは全く違っていた。メキシコ時代の映画なので「昇天峠」的テイストのちょっと長閑な且つ残虐な映画を想像してたのだが、むしろ「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」に近い映画であった。

舞台は貴族の館。そこで催されたパーティーに招待された客、主人、執事が何故か部屋から出られなくなり(閉じ込められたわけではない)、食べ物がなくなり水がなくなりと、まるでサバイバルのような様相を呈してくるという、完全な不条理劇である。徐々にそれぞれの人間が醜悪な部分をさらけ出すところなど、正にジャングルや山で遭難したグループが極限状態に置かれ人間性をなくし崩壊していくのと同じパターン。但し、こちらは普通に部屋の中。ドアも開くし仕切りもないのに何故か部屋から出られないのだ。

結局最終的には出られるのだが、更にまた落ちのような場面で終わる。スペイン内戦の暗喩のような思い付きの発想のようなちょっと分かり難い映画ではあるが、間違いなくブニュエルの映画である。いろんな解釈が出来そうだが、そういう部分は、ブニュエルが一番してやったりと思うところではないのかと他のブニュエル映画を見ても思うところである。
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