ALSでは病初期においてミトコンドリアの機能異常が生じているという説がある.これを支持する根拠として,ヒト家族性ALSの原因遺伝子を導入したSOD1 Tg miceにおけるミトコンドリア異常が挙げられる(具体的には2系統のTg miceにおいてミトコンドリアの膨張や空胞化が報告されている).つまり,ミトコンドリアはALSの治療戦略の主要なターゲットのひとつと考えられ,実際,SOD1 Tg miceに対してミトコンドリア機能の改善を目的としたクレアチン投与が行われ,生存期間の延長が確認されている(ただSOD1 Tg miceでの検討結果をヒト孤発性ALSにどれだけ当てはめてよいものか疑問である).ちなみにクレアチンはmitochondrial transition pore (MTP)の安定化によるアポトーシスの抑制,もしくは直接,抗酸化剤として作用し,神経保護的に働くものと推測されている.
以上を背景に,今回,クレアチン5g内服の効果の有無について検討が行われた.方法はrandomized double-blind, placebo controlled trialで104例の症例(呼吸器機能はFVC>50%,罹病期間は5年以内)について検討.評価項目は上肢8ヶ所の筋力,および握力,ALSFRS-R,motor unit number estimation(MUNE).観察期間は6ヶ月とした.結果は残念ながら偽薬群と一切,有意差を認めなかった.Tg miceとヒトでの効果の解離の原因の考察として,内服量の違いや内服時期の違いが挙げられている.
現在,欧米ではCereblex(COX2阻害剤),ミノサイクリン,コエンザイムQなどの治験が進行中であり,これらの結果が待たれる.
Neurology 63; 1656-1661, 2004
以上を背景に,今回,クレアチン5g内服の効果の有無について検討が行われた.方法はrandomized double-blind, placebo controlled trialで104例の症例(呼吸器機能はFVC>50%,罹病期間は5年以内)について検討.評価項目は上肢8ヶ所の筋力,および握力,ALSFRS-R,motor unit number estimation(MUNE).観察期間は6ヶ月とした.結果は残念ながら偽薬群と一切,有意差を認めなかった.Tg miceとヒトでの効果の解離の原因の考察として,内服量の違いや内服時期の違いが挙げられている.
現在,欧米ではCereblex(COX2阻害剤),ミノサイクリン,コエンザイムQなどの治験が進行中であり,これらの結果が待たれる.
Neurology 63; 1656-1661, 2004