Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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アミロイドβ抗体ガンテネルマブにおける副作用ARIAの危険因子はAPOE遺伝子に加え,大脳白質病変,アミロイドβ病理の重症度なども関与する

2024年11月21日 | 認知症
JAMA Neurology誌の最新号に,アミロイドβ(Aβ)抗体ガンテネラムブを用いた臨床試験(GRADUATE I/II試験)において認められた副作用,アミロイド関連画像異常(ARIA)の特徴や危険因子を詳細に検討した研究が報告されました.世界30カ国288施設のデータをもとに解析しています.

対象は50歳から90歳までの早期アルツハイマー病患者1939名で,ガンテネラムブまたは偽薬を116週間投与されました.さらに希望者には追加治療(PostGraduate試験)が行われました.治療中は定期的に頭部MRIが実施され,ARIAの発生状況がモニタリングされました.

結果として,ガンテネラムブを投与された患者の24.9%がARIA-E(浮腫)を発症し,その多くが治療開始後64週以内に発生していました.うち約20%が中枢神経系症状(頭痛やめまいなど)を認めました.

APOE ε4遺伝子はホモ接合体(2コピー保持)ではリスクが顕著に上昇しました(ハザード比4.65).ホモ接合体ではARIA-Eに加え,ARIA-H(出血)リスクも高い結果でした.ヘテロ接合体(1コピー保有)でもリスクは上昇しました(ハザード比2.0).またFazekasスコア(大脳白質病変の指標)が高い場合(ハザード比1.65)や,Aβ関連病理の重症度を反映する脳脊髄液中Aβ42濃度が低い場合(ハザード比0.40)もARIA-Eのリスクが上昇しました.さらに脳表ヘモジデリン沈着症や微小出血もARIA-Eの発生リスクと関連していました.



またARIAを呈した群とARIAを呈さなかった群の間で,試験終了時点(116週目)における認知機能スコアやADLの変化に有意差はありませんでした.ただし重症ARIA-E(中枢神経症状を伴うARIA-E)の場合,個々のケースでは認知機能の低下が認められました.

以上より,本研究はAβ抗体療法の開始前に,ARIAリスクを個々の症例で評価し,安全モニタリング計画を立てる重要性を示唆しています.MRIの微小出血,脳表ヘモジデリン沈着症に加え,大脳白質病変(これは恐らく血管のアミロイド沈着による虚血性?変化を反映する)や脳脊髄液中Aβ42の低下の程度を加味する必要があるかもしれません.他の抗体にも当てはまりそうですが,絶対ではありませんので,それぞれの抗体薬で検証する必要はあると思います.
Salloway S, et al. Amyloid-Related Imaging Abnormalities in Clinical Trials of Gantenerumab in Early Alzheimer Disease. JAMA Neurol. 2024 Nov 18:e243937.(doi.org/10.1001/jamaneurol.2024.3937
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