CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)は常染色体優性遺伝を呈する疾患で,脳卒中様発作や片頭痛,情動異常,皮質下性痴呆を認め,病理学的に小動脈の形態異常を特徴とする.症状はMELASと似ているが,成人発症(25歳前後に片頭痛,30~50歳で脳卒中発作が一般的)である点が鑑別のポイントのひとつと言える.原因遺伝子としてはNotch 3遺伝子が同定されている.最近,本邦からもめまいのみを呈するNotch 3遺伝子新規遺伝子変異(C206R)も報告され,その表現型の多様性も注目される.
さて,今回,フィンランドより妊娠・産褥期におけるCADASILの神経所見に関する研究が報告された.この研究では19家系46例の女性が検討されている(いずれもNotch 3遺伝子 R133Cミスセンス変異を有する).このうち39例が妊娠を経験し,そのなかの25例についてretrospectiveに臨床経過を検討した(カルテないし質問票を用いた).結果として25例中12例(43妊娠中17妊娠)において,妊娠・産褥期間中の神経症状を認めている.具体的には半身の感覚障害が最多で(76%),その他,失語(65%),視覚異常(47%)片麻痺(36%)であった.82%の患者にとっては,それらの症状がCADASILの初発症状であった.とくに神経症状は30歳以上の妊娠で認められやすく,かつ産褥期に多い傾向を認めた.
以上の結果は,産褥期において神経症状を認めた女性においてCADASILも鑑別診断に挙げる必要があること,ならびにCADASIL家系の一員である女性が妊娠した際には厳重な経過観察が必要であることを示唆している.
ちなみに画像は肥厚した動脈壁とeosinophilic depositを示している.
Neurology 64; 1441-1443, 2005
さて,今回,フィンランドより妊娠・産褥期におけるCADASILの神経所見に関する研究が報告された.この研究では19家系46例の女性が検討されている(いずれもNotch 3遺伝子 R133Cミスセンス変異を有する).このうち39例が妊娠を経験し,そのなかの25例についてretrospectiveに臨床経過を検討した(カルテないし質問票を用いた).結果として25例中12例(43妊娠中17妊娠)において,妊娠・産褥期間中の神経症状を認めている.具体的には半身の感覚障害が最多で(76%),その他,失語(65%),視覚異常(47%)片麻痺(36%)であった.82%の患者にとっては,それらの症状がCADASILの初発症状であった.とくに神経症状は30歳以上の妊娠で認められやすく,かつ産褥期に多い傾向を認めた.
以上の結果は,産褥期において神経症状を認めた女性においてCADASILも鑑別診断に挙げる必要があること,ならびにCADASIL家系の一員である女性が妊娠した際には厳重な経過観察が必要であることを示唆している.
ちなみに画像は肥厚した動脈壁とeosinophilic depositを示している.
Neurology 64; 1441-1443, 2005