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『ちょちょら』再読…再々読…♪

2023-06-05 12:38:39 | Weblog
もう何度目になるでしょうか、畠中恵著の『ちょちょら』を読んで楽しんでます
播磨の国多々良木藩の江戸留守居役を拝命した間野新之助。
彼の前に江戸留守居役を務めていた人物が理由を明らかにせぬまま辞任し藩から退去、その同役であった新之助の兄千太郎も理由を明かさず自刃したためお鉢が回ってきたというわけで、留守居役組合の先輩たちに鍛えられながらお役目をこなしつつ成長していく。
そして幕府が六十余州いずれかの藩に言いつけるであろう御手伝い普請をなんとか回避したいと、組合の先輩たちと知恵を出し合い駆け回り、やがて
言いつけられる藩が一つもなくなれば普請はなくなるにちがいない
という新之助のコペルニクス的転回で、六十余州すべての江戸留守居役が志を一つにして事に当たり、見事成し遂げてしまうというお話です。
まず新之助って自己評価が極めて低いのよね、冒頭でも江戸家老が彼を評して“平々々凡々々”と言ったと書かれてますが、彼自身がその通りだと肯定しているし、常々何に付けても亡兄と自分を比較して自分は劣っていると言う。
まぁ亡き兄上というのが見目麗しく文武両道の人気者という非の打ちどころのない人物、新之助はそんな兄が大好きで自慢だったから兄しか見てなかったんじゃないかと思うのよね、比較の対象は常に兄だけで、回りは他の人はどうだろうってことには興味が向かなかったんじゃないかな。
実際にはなんだかんだ言いながら行動力もあるし度胸もある、組合の先輩平生さんは新之助のちょっとした構えを見ただけで結構腕が立つはずだと見抜くし、挙句にコペルニクス的転回、それによって幕閣の中枢に坐する老中水野さまから高く評価されることになるんだから、“平々々凡々々”なワケがない。
亡兄千太郎さんだったら、一癖も二癖もある組合の先輩たちと上手くやれたかな、接待の場を楽しく盛り上げることが出来たかなって疑問が沸くし、幕閣相手に大勝負なんて発想には至らなかったんじゃないかとも思う、そう考えれば千太郎さんこそ極めて優秀な凡人だったのかも。
それにしても江戸留守居役って大変なお役目だったんですねぇ
コメント
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