『梔子の木〈小烏神社奇譚〉』 篠綾子著 幻冬舎時代小説文庫
前作から引き続き、江戸の町には不眠や悪夢に悩まされる人々が多くいて、やがて医術ではなく祈祷とお札でそれを直すという“薬師如来の申し子”なる者が出現したという噂を医者の泰山先生が聞きこんできて、さらには寛永寺の天海大僧正は将軍様が不眠に悩まされていることに心を痛めており、そのいずれにも鵺が関わっているのではないか、と…。
第5作『猫じゃらし』で猫の姿をとる付喪神として誕生したおいちも付喪神としてかわいく活躍しますし、新たな付喪神も登場して大活躍します、もちろん竜晴さまや天海大僧正、伊勢貞衡どのも
みんなの活躍でひとまずは鵺を消し去ることが出来たものの、一件落着とはいかないようで…
そして第1作目から竜晴さまの傍らにいる太刀の付喪神、白蛇姿の抜け丸とカラス姿の小烏丸ですが、小烏丸は壇之浦の合戦でその本体である太刀が失われて以来、それ以前の記憶を失くしています。
本来付喪神というものはあまり長く本体を離れていてはその力を維持できぬもの、また本体が壊れてしまえば付喪神自身も消滅したりするもの、なのに小烏丸が無事に元気に存在しているということは本体は無事でただ行方知れずというだけかもしれない。
それでも壇之浦の合戦から江戸三代将軍の時代といえばおよそ400年余りの時が流れているのだから、それだけ長い間を本体から離れたまま無事に過ごしている小烏丸はただの付喪神じゃないんじゃないって思ってきたんだけど…。
小烏丸は自分の本体の持ち主だった人物に関わる夢を見る、もっとも目覚めたときにはその内容は皆目覚えていないってことが第1作目から第6作目まで続いて、今回ついに夢から覚めたときに失われていた記憶を取り戻すの。
だからね…、だからね…、ワタクシ愚考いたしまするに、なんだけど……、第6作の伏線は成仏していない白拍子祇王の霊が現れて亡き重盛さまの彷徨える魂を成仏させてくれと願う、本作では何かが己の中に流れ込んでくるのを感じて付喪神となりおおせたという小烏丸の夢、…ということは、重盛さまは小烏丸の中にいるんじゃないの …いや、合体しちゃった …だから本体から400年余も離れていても付喪神が無事でいられるわけで…
いや、まぁ、そぉんな単純な話じゃないだろな…
第7作目が出るのはおそらく12月の初旬です、楽しみだなぁ