
■ 「バルカン政治家」菅直人 ■
菅総理の写真を探していたら、若かりし頃の写真を見つけました。
一介の若者から、一国の首相に昇り詰めるまでには、それなりの運と才能が必要です。
菅直人は今でこそ「アキカン」などと揶揄されていますが、本来は「バルカン」政治家で通っていました。
「バルカン」とは、バルカン半島を意味し、「混迷する政局」の比喩です。
政局が混乱を極めた時に、水を得た魚の様にそれを乗り切る政治家達を指す言葉として、使用されていた様です。
細かい政策や、緻密な戦略は苦手でなのに、政局になると頭角を現す政治家が、菅直人となら、地道にネゴシエーションを繰り返す小沢一郎とは対極にある政治家とも言えます。
■ 「浜岡停止要請」というカイワレダイコン ■
菅総理を首相の座まで押し上げたのは、「空気を読む力」では無いでしょうか。
「イヤイヤ、全然空気読めないじゃないか」と仰る方が多いでしょうが、彼が読んでいるのは、「空気の流れが変わる瞬間」です。さすが、理系だけあって、変曲点は逃さないのです。
かつてのO157の事件でも、マスコミの「カイワレ大根叩き」に庶民が辟易したタイミングを上手く捕まえています。
今回の「浜岡」でも、次々に明らかになる事件の真相に、世の中の大勢が「反原発」に偏った瞬間を上手くつかまえています。
原発問題は原発を推進した自民党が本来責任を取る問題ですが、政権政党である民主党と菅政権はとばっちりを受けた形です。(民主党にも旧自民党議員は原発利権とどっぷりの方もいらっしゃいますが)
そこで、自民党の尻拭いで「原発推進」を継続して支持率を落とすよりは、「反原発」という民主党左派の本来の立ち位置に戻った方が、有利だと判断したのです。
■ 福島の事故は特殊では無い ■
今回の福島事故の真相は今後明らかになると思われますが、3号機の燃料プールの即発臨界爆発説まで出てくると、事態はチェルノブイリに劣らず深刻です。
今回、旧式の沸騰水型の原発の弱点が色々と明らかになっています。
「事物の核心」は、「津波」でも「電源喪失」でも無い可能性があります。
① 配管が破断が疑わしい
16cm厚の鉄鋼で出来ている圧力容器よりも、配管の強度が弱い事は明確です。
配管は、サスペンションやダンパーを用いて耐震性を確保していますが、地震の揺れの
周期は複雑です。その結果、吸収し切れない力によって、配管は激しく揺すられます。
配管は高温高圧の水蒸気や放射線によって、内部の肉厚が削られています。さらに溶接
部分の強度も経年劣化してゆきます。圧力容器や格納容器が破損するよりも、配管の
炉心との接続部や、屈曲部の破断や損壊の可能性が高いと思われます。
電源が復旧した後も、循環系の冷却装置が作動しない事は、配管の破断を示唆しています。
② 「使用済燃料プール」という盲点
今回の事故で4号炉の使用済燃料プールで火災が発生しました。3号炉も使用済燃料
プールでの即発臨界爆発が疑われています。
これまでの原子炉の安全性は、圧力容器や格納容器の耐破壊性を追及してきました。
一方、原子炉建屋の上部に無造作に設置された使用済燃料プールにはあまり注意
が払われていませんでし。
しかし、使用済燃料はプルトニウムの比率が高いので、ウラン燃料棒よりも臨界を
起こしやすい状態です。使用済燃料で再臨界が発生しないのは、金属のカゴで、燃料
棒の距離を適切に保っているからです。
3号炉の即発臨界疑惑では、水素気爆発で、この「距離」が変わってしまったのだろ
と予測されています。水素気爆発は、プールの水が抜けて使用済燃料棒が高温となり
水と反応して水素が発生した事が原因です。
使用済燃料プールの水は何故無くなったのか?冷却系の喪失も理由の一つですが、
燃料プールの亀裂による漏水も否定出来ません。
このように、どの原発でも普通に存在する、配管と燃料プールが事故の原因であるならば、日本中の原発が同じ危機を有している事になります。
■ M9.0は偽り ■
さらに、今回の地震が本当に想定外の震度だったかという問題もあります。
① 気象庁は最初M8.4と発表
② M9.0に訂正するが、これは計算方法を世界標準のモーメント・マグニチュードに変更
③ 原発の耐震基準は8.4
④ M8.4で原発事故は発生してはならないので、M9.0にしてしまった。
⑤ 福島第一で記録された地震による加速度(ガル)は中越地震の柏崎以下
⑥ 福島第一から震源地までの距離は100Km以上
⑦ 東北大震災は津波被害は大きいが、揺れによる被害は甚大では無い
もし、福島第一の事故原因が、津波では無く、地震による配管の損傷であるならば、地震の規模も「想定外」にする必要がありました。
この問題を震災後、いち早く指摘した北海道大学の地震学者の島村教授は、何故か逮捕されてしまいました。
■ 浜岡原発の事故は、日本の破滅 ■
地震が活動期に入り、次は東京直下型地震か、東海地震が発生するとも言われています。
浜岡原発は東海地震で動くとされる活断層の上に位置します。
もし、地震が発生して浜岡原発が重大事故を起こせば、西風に乗って放射性物質が東京まで到達するといわれています。
現在の日本で、二回目の原発の事故は、国家の信用失墜に直結します。
そそて、浜岡の事故は、東京の首都機能を奪い去ります。
GEの元技術者である菊池氏は、浜岡原発の原子炉を支える鋼鉄製のスカートは、厚さが薄く、直下型のタテ揺れに耐えられないと指摘しています。
さらに、配管関係の不備も指摘しています。
■ 「浜岡停止要請」で先手を打った菅首相 ■
今後、福島の真実が明らかになれば、世論はさらに「反原発」に傾きます。
菅首相は「浜岡停止要請」によって、「原慎重論」に方向転換し、「反原発」を味方につけようとしています。
原発推進論者達が、どんなに合理的かつ論理的に原発の安全性や、放射能の無害性を主張しても、国民は「感情的選択」しかしません。
菅総理は、時代の変曲点に敏感です。
「浜岡停止要請」は、現代の「カイワレ大根一気食い」ですが、その結果、民主党は庶民に迎合して、「原発慎重派」に政策を変更しました。自民党との対立軸が明確になるこの政策変更は、政治的には正解ではないでしょうか?
これをポピュリズムと批判するのは簡単ですが、「大衆迎合」こそが現代の政治の本質です。