■ 「1967年以前の国境線」・・・イスラエルの国境って何処? ■
オバマ大統領は19日の中東政策演説で、パレスチナを正式国家にする際の国境について「(第3次中東戦争前の)1967年ラインに基づくべきだ」と表明ました。
「オバマ大統領「パレスチナ国境、1967年ラインで」
イスラエルの入植活動、否定と取れる発言」・・・日経
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381959FE0E2E2E2828DE0E2E2E7E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2
これはアメリカの従来の見解を再度表明したもので、中東和平の進歩でも後退でもありません。様は、大した事無い発言なのです。
しかし、公の場で「1967年以前の国境線が正しい」と言う事は、イスラエルに対しては大きな不利益になります。
1967年の第三次中東戦争によって、イスラエルが実効支配(占領)した地域は、決して小さなものでは無いからです。
<Wikispediaから引用>
1967年 - 第三次中東戦争(六日間戦争)。エジプトのナセル大統領による紅海のティラン海峡封鎖が引き金となり、イスラエルが「先制攻撃」を実施。エジプトからシナイ半島とガザ地区を、同戦争に参戦したシリアからゴラン高原を、ヨルダンから東エルサレムとヨルダン川西岸全域を奪取。六日間でイスラエルの圧倒的勝利に終わる。
<引用終わり>
上の地図の赤で塗った地域が、今回問題になっているパレスチナ人の住む地域の「ヨルダン川西岸地区」と、「ガザ地区」です。
■ 多くのユダヤ人入植者が生活している ■
イスラエルのネタニアフ首相は、アメリカ議会で演説し、オバマの提案を全面拒否しました。
イスラエル、全面撤退拒否…オバマ方針に抵抗・・読売
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110526-OYT1T00023.htm
この演説に対して、アメリカ議会では大きな拍手が沸いたとの報道がされています。
アメリカでは強力なユダヤロビー(政治団体)が活動しており、アメリカの議員の少なからぬ人々が、ユダヤロビーの影響下にあります。彼らは、オバマの提案に否定的です。
現実的には、ヨルダン川西岸地区には多くのイスラエル人が入植して生活しています。1967年以前の国境線に戻すならば、これらの地域のイスラエル人は、難民となってイスラエルに流入してきます。
現政権のネタニアフ首相は、イスラエルの右派政党リクードの党首です。パレスチナに対して強硬な姿勢を示す事が、彼の国内での政権基盤を強化するので、ネタニヤフは安易な妥協はしません。
■ ファハタとハマス ■
パレスチナ人達は、ガザ地区と、ヨルダン川西岸地区をパレスチナ国家として国際的に認めて欲しいと主張しています。
現在は「パレスチナ暫定自治政権」となっていますが、国連ではパレスチナを正式な国家として承認する気運が高まっています。ヨーロッパ勢はこの動きに加担しています。
しかし、アメリカは拒否権を発動するでしょうから、国連決議は成立しません。
「パレスチナ暫定自治政権」と言っても、一枚岩ではありません。
国際的に承認されているのは(欧米の傀儡)ヨルダン川西岸地区に拠点を置く「ファハタ」です。アッバス議長が、国際的にはパレスチナを代表する人物とされています。
一方、ガザ地区は、イスラエルに対してテロ攻撃を繰り返す強硬派の「ハマス」が支配しています。「ハマス」は凶悪なテロ集団の様な報道をされていますが、むしろパレスチナ人の互助組織の様な存在で、難民を救済したり、病院や学校を建設してパレスチナ人の生活を支えているので、近年、パレスチナ人の支持を集めています。「ハマス」を後方から援助するのが、エジプトのムスリム同胞団であり、イランです。
■ エジプト - ガザ の国境が開放された ■
アメリカの傀儡であったムバラク政権は、ガザ地区とエジプトの国境を閉鎖していました。ガザ地区はエジプトとイスラエルに挟まれて、陸の孤島と化していました。
エジプトのムスリム同胞団は、国境の下にトンネルを掘り、そこからガザ地区に物資や武器の支援を行っていました。
そのガザとエジプトの国境が、開かれる事になりました。
エジプト:ガザ、出入り自由に 検問所開放、外交転換鮮明に ・・毎日
http://mainichi.jp/select/world/news/20110526dde007030008000c.html
<引用開始>
【カイロ和田浩明】エジプト政府は28日から、パレスチナ自治区ガザ地区との唯一の出入り口であるエジプト境界のラファ検問所を常時開放し、地区の封鎖を緩和する。国営の中東通信が25日報じた。常時開放は、イスラム原理主義組織ハマスが07年にガザを実効支配して以来初めて。
エジプトでは、イスラエルの後ろ盾である米国の意向を受けてパレスチナ人のラファ通過を厳しく制限してきたムバラク前政権が2月に民衆蜂起で崩壊しており、軍最高評議会が後を引き継いで以来、今回の措置はエジプトの対外政策の大きな変化の一つだ。イスラエルが反発を強めるとみられる。
中東通信によると、検問所は休日である金曜日と祝日を除く毎日午前9時から午後5時まで。女性は誰でも、男性は18歳未満と40歳以上なら、パスポートを所持していれば事前にビザを取得せずに出入りできる。エジプトの大学在学者や医療を受ける患者も対象。
エジプトは4月27日、イスラエルがテロ組織と見なすハマスと、パレスチナ自治政府を率いるアッバス議長の出身母体である穏健派ファタハの和解を仲介することに成功。ラファ検問所の常時開放についてもアラビ外相が実施方針を表明していた。
一方、イスラエルを承認せず武装闘争方針を放棄していないハマスに対し、イスラエル政府は、武器やテロ容疑者の出入り規制を理由にガザ地区を封鎖。米国から多額の援助を受けていたムバラク前政権も実質的に封鎖を支援してきた。ただ、ラファ周辺にはガザ地区に通じる多数の地下トンネルが掘られ、物資の密輸や人の移動が行われていた。
エジプト軍最高評議会は、反米を掲げるイランとの関係修復を模索する動きも見せており、今回の措置はイスラエルを刺激しそうだ。
<引用終わり>
■ 中東民主化はイスラエルを追い詰める ■
ネタニヤフ首相がアメリカ議会でどんなに勇ましい発言をしようとも、イスラエルは確実に追い詰められています。
アメリカの傀儡であったムバラク政権が倒れた事で、国境を接するエジプトのイスラム勢力の台頭は確実になっています。ラファ検問所の開放は顕著な例です。
さらに、エジプトは「ファハタ」と「ハマス」の話し合いを仲介し、分断されていたパレスチナを一つにしようとしています。従来は国際社会との窓口は、「ファハタ」のアッバス議長が勤めていましたが、アッバスはパレスチナ人からは、欧米の傀儡として嫌われています。
「ハマス」と「ファハタ」が和解して、パレスチナ統一政府が出来れば、パレスチナは欧米のコントロール下から離れる事になります。
エジプトと国境を接するリビアのカダフィーが窮地に陥っている事で、エジプトはリビアを気にする事無く、イスラエルとパレスチナに集中出来ます。
カダフィー同様に、中東の反米政権を演じていた、シリアのアサドも窮地に立たされています。シリアはイスラエルと国境を接し、ゴラン高原を1967年にイスラエルに占領されています。
かつてはシリアのアサド大統領はイスラエル攻撃の急先鋒でした。しかし、いらく戦争後はカダフィー同様、やけにオトナシクなってしまい、ゴラン高原の国境地帯は、比較的安定していました。
しかし、先日、パレスチナ人達が、ゴラン高原のシリア側国境からイスラエルに侵入するなど、アサドの勢力低下が、国境地帯の安定を脅かしています。
イスラエルの西で国境を大きく接するヨルダンも民主化の動きが活発化しています。ヨルダンのアブドラ国王も欧米の傀儡です。ヨルダンでイスラム勢力がエジプト同様に政権を奪取すれば、イスラエルの安全は大きく脅かされます。
■ 中東の「危機の上の均衡」が崩されている ■
石油ショックの原因となった1973年の第四次中東戦争以降、中東はリビア、シリア、イランといったアラブ強硬派と、サウジアラビア、エジプト、ヨルダンなどの穏健派、そしてイスラエルとその背後の米英の力が拮抗し、中東は「聞きの上の均衡」を保っていました。
長期に渡る原油価格の安定は、この「均衡」の上に成り立っていました。
中東の均衡が今破られようとしています。表面的にはTwitterやFacebookといった情報伝達ツールやWikileaksによる暴露に触発されて市民が自発的に起こした革命がジャスミン革命です。
しかし、その結果は、中東の「危機の上の均衡」を大きく崩しています。
さらに、リビアでも、スーダンでも、原油利権を持っていた政府を、油田地帯を拠点とする反政府軍が圧倒する事で、瀬球利権が政府の手から強奪されています。
反政府勢力を支援しているのは、ヨーロッパ陣営です。
リビアでは、フランスがヘリコプター空母まで投入し、市街地の戦闘にヘリから低空支援を行っています。カダフィーが頑張っているので、リビアはフランスやイギリスにとってのイラク戦争の様相を呈しています。
■ 使い勝手の良い「ハマス」と「ヒズボラ」 ■
ガザ地区を拠点とする「ハマス」と、レバノンを拠点とする「ヒズボラ」はイスラエルに対して攻撃的です。
逆に「ハマス」と「ヒズボラ」を用いれば、中東有事はいつでも作り出す事が出来ます。
「ヒズボラ」を装った何処かの国の諜報機関が、ロケット弾をイスラエルに打ち込めば、イスラエルを過剰に反応して、レバノンに侵攻してきます。本当の「ヒズボラ」がこれに応戦しますが、彼らはイスラエルと戦う事で国民の信頼を得ていますの、最初のロケット弾攻撃が自分達の作戦で無かったと主張する事は無いでしょう。
「ヒズボラ」と「ハマス」をイランは資金的に支援しています。「ヒズボラ」が危機に陥れば、「ハマス」が決起して、イスラエルを後方から撹乱するかもしれません。「ハマス」を牽制していた、エジプトのムシャラフ政権は崩壊しています(軍部は無事ですが)。
準備万端整っています。「後は誰が何時引き金を引くか?」です。
その結果は、第五次中東戦争に発展します。
「イラン」の核を警戒する「イスラエル」が、イラン国内の核施設を空爆して、イスラエルと周辺国の小さな紛争が、中東全域を巻き込む「中東戦争」に発展するというのが、筋書きでは無いでしょうか?
■ 中東戦争の本当の目的 ■
その目的は、「石油高騰」。
ドルを始め全ての通貨が過剰に発行され、その信任が揺らいでいます。
通貨の信任を回復すいる為には、通貨を大量に必要とする状態が必要です。
産油国は原油高騰で稼いだお金を、軍備に投入します。
戦争こそが最大の公共事業だとすると、先進国は武器を輸出して儲け、産油国は原油を輸出して儲け、余ったお金で先進国の国債を買い支えるかもしれません。
戦火にさらされる国民の存在を気にしなければ、そこにはWin & Winの関係が成り立っています。
ここから先、読み難いいのが、ドルと円の動向。
新興国を中心に世界の大変革を試みる多極化の流れでは、ドルとアメリカにはそろそろ引退して頂く必要がありそうです。
新しい機軸通貨(例えばSDRの発展形)の中に、ドルがそのまま残るのか、それとも、世界の負債をドルと合成国家であるアメリカ合衆国に押し付けて清算するのかが分かれ目です。
アメリカは州単位でも国家レベルのGDPがありますから、連邦政府に負債を押し付けて、州単位で北米連合を作って加入すれば、キレイサッパリ再生するでしょう。
ロシアの国家崩壊という前例もありますし、幾つかの州が合体すれば、充分な国際競争力も有しているはずです。