■ ギリシャは「選択的デフォルト」? ■
ギリシャ問題は複雑怪奇な状況を呈しています。
1) フランスがギリシャ国債の借り換え(ロールオーバー)を提案
2) S&Pなど格付け会社が、「ロールオーバーはデフォルトと見なす」と脅す
3) ECB(欧州中央銀行)のトリシエ総裁は債権スワップによるロールオーバーを断念
4) 格付け会社は、ギリシャの大手銀行の借り換えが実施されている間は
「選択的デフォルト」扱いにして、デフォルトとしないと譲歩。
いったいどうなっているのか、さっぱり分かりません。
■ デフォルトではECBはギリシャ国債を買えない ■
S&PがECBに掛けた圧力は、「デフォルトした国債をECBが買い入れる事が出来ない」というルールを利用した揺さぶりです。
ロールオーバーとは、償還期限の来た国債分に相当する、新たな国債を発行して、償還分の資金を確保するという方法です。
現状ギリシャ国債の引き受け手はほとんどいませんので、ギリシャ国債の保有者は、結局自分のギリシャ国債を「交換」しただけの結果となります。
それではギシリャのぼろ儲けではないかと思いますが、金利を高くすなるなど貸し手側にも相応のメリットを用意するのでしょう。
フランスを初め欧州は、ギリシャ問題を先延ばしにする為に、国債のロールオーバーを画策しましたが、格付け会社がこれを許さないと脅したのです。
「ロールオーバーはデフォルトと見なすぞ!!」・・・と。
■ ジャンク債で儲ける方法 ■
格付け会社からすれば、ギリシャ国債などとっくにジャンクなのでしょうが、どうもこちらも煮え切らない。
結局、ECBがギリシャの大手銀行に資本注入している間は「選択的デフォルト」扱いとして、
デフォルトとはしないと言い出しています。
こういう場合は、債権相場が大幅に変動したりします。
ギリシャ国債はすでにジャンク債扱いですから、多くの投資家がこれで一儲けしようと虎視眈眈と狙っています。
デフォルトにしてしまったら、ババ抜きが終わってしまいますから、ギリギリまで場を盛り上げている様にも見えます。
さらにCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が大量に発行されていますから、ギリシャ国債がデフォルトすれば、その危機は「金融」によって拡大伝搬します。
■ 単純には時間稼ぎにしか思えない ■
アメリカの財政が8月2日に危機に陥ると言われ、ギリシャも8月22日の大量償還が凌げるかどうかが問題視されています。
どうもドルの凋落にユーロを突き合わせる為のギリシャ危機に思えてなりません。
ユーロもドルも円も、勝者のいないチキンレース状態を、だれかが演出している・・?
■ 日本政府の米国債はロールオーバーが常識 ■
ところで、日本政府が所有する米国債は、ロールオーバーされ続けています。
という事はS&Pに言わせれば、米国債は既にデフォルトしている・・・?
<追記 2011.06.06>
田中宇氏が分かり易い解説をしてくれていました。
1) 格付け会社がギリシャ国債をデフォルト格(D格)にする
2) ギリシャが欧州中央銀行の追加融資でデフォルトを免れる
3) 格付けがD格なのに、実際にはギリシャはデフォルトしない
4) 格付けに連動したCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が信用を失う
5) 金融兵器としてのCDSが効力を失う
だいたいこんな内容だと思われます。
結局ギリシャをめぐるグダグダは、攻めている様に見えている格付け会社が、実は窮地に陥っているという視点です。
では国債市場が安泰かと言えば・・・ガイトナー財務長官やベアー米預金保険機構総裁を始め、オバマ政権の金融・財政官僚達が一斉に逃げ出しているようです。
これも8月米国債危機に現実味を持たせる「演出」とも見えますが、もしもの時の為に、心と懐の準備は必要かもしれません。