■ ギリシャの次はポルトガル ■
ムーディズがポルトガルの格下げを行いました。
上のグラフはスペインとポルトガルの国債利回りの推移です。
スペインの金利も上昇していますが、
注目すべきはポルトガル。
短期債の金利が長期債の金利を上回っています。
この様な長短金利の逆転は、
普通は景気後退局面で発生します。
将来的な金利低下(デフレ)が予測されるからです。
しかしポルトガルの短期金利の上昇は急激です。
PIGSの短期国債は今やジャンク債状態ですから、
ムーディーズの格下げによって一気に売りが殺到しているのでしょう。
半年程前は、ギリシャ債ですら「危ない時こそ買い」という勢力も居ました。
ギシシャの経済規模を考えればECBが救済出来ないはずが無い・・。
そう考えた勢力が短期債を中心に買いに走ったわけです。
ところが、ギリシャ国債はロールオーバーで事実上のデフォルトです。
ギシシャ1国の救済でこれ程苦労するのだからポルトガルは・・・。
投機筋が恐怖に駆られるのも理解出来ます。
彼らは短期国債を中心の運用をていたはずですから、
慌てて短期国債を売ろうとします。
■ ネクスト・バッター・ボックスは満席 ■
ポルトガルが危なくなれば、
ポルトガルの国債を大量に保有するスペインに波及します。
そして、スペインの危機はフランスに、
フランスの危機はドイツに連鎖します。
それとは別組みで、アイルランドと一蓮托生のイギリスも次打席に立つ勢いです。
そしてイタリアもベンチを立った状態・・・。
「おいおいユーロはマジでヤバイかも・・・」と思わせる状況です。
■ 逃げ場など無い ■
ユーロから逃避した資金はドルに向おうとしますが、
あれあれ、こちらはグラウンドで乱闘が始まろうとしています。
それらなと消去法で円・・・地震と原発と財政破綻直前だ・・・。
アジアなら・・・中国はハンパない状況です。
誰も済まないマンションや、空のオフィスビルの転売が続いています。
シンガポールのファンドが中国の大手銀行の株を手放し始めています。
それなら資源国通貨に・・・
あれ、世界同時不況になったら資源の需要は激減するのでは・・。
残るはスイスフラン・・・2012年には新券への切り替えを控えています。
なんだか、こちらも怪しい雰囲気が漂います。
そう、世界の通貨危機は同時進行なのです。
短期的にみれば、目先の利く者が稼ぎ易い状態ですが、
「目先が利く」とは「インサイダー」と同義語です。
こんな状況だから、誰かさん達が荒稼ぎしているのかも知れません。
■ 世界同時インフレで借金から解放されるというシナリオ ■
現在世界で起こりつつある事は
勝者の居ないレースです。
皆一斉に崖に向ってダッシュしています。
皆で落ちれば怖くない・・・。
結局、ドルもユーロも円も元も資源国通貨も
皆仲良く価値を失ってゆけば
どこかの通貨だけが大暴落する事を防ぎながら、
インフレによって、政府も民間も借金から開放されます。
どこかの時点で各国の中央銀行が
自国国債を大量購入して幕引きです。
既にリーマンショック以降、
アメリカはFRBが米国債を大量購入しています。
ヨーロッパも国債の持ち合いや間接的な買取など、
自国国債の直接買入れと同様な政策を行っています。
しかし次なる「緩和」はもっと盛大に行われるでしょう。
ヨーロッパでは中央銀行の自国債の直接買入れは
法的に禁じられていますが、
きっとこれは破られるでしょう。
■ 高インフレの後の通貨統合 ■
結局世界の通貨が溢れ、
政府も民間も借金がチャラになります。
しかし同時に通貨の価値が大きく損なわれますから
当然人々は現物に殺到します。
金が原油が食料が、そして少し送れて土地や不動産が高騰します。
株価も一旦底を打った後に、優良企業から高騰します。
要は「世界同時高インフレ」が発生するのです。
このインフレの収拾手段として通貨統合が模索されるでしょう。
一国の通貨では信頼が得られないので、
各国通貨を束にして、それに部分的な金兌換性でも付けて
通貨の価値を保とうとするでしょう。
あるいは「コモディテー・バスケト」で通貨の価値を担保するかもしれません。
金では全世界の通貨を担保するには量が少なく、
工業用の金が高騰しすぎると産業の発展を阻害するからです。
これにはFRBのSDRが最適です。
■ 第三次修正ブレトンウッズ体制 ■
金には限りがあるので通貨発行量に制約を受けます。
現在、アメリカやIMFは大量の金を放出し
それを中国やインドが買い漁っています。
この動きを見ていると、
実はIMFのSDRは金兌換制度を採用しないのかもしれません。
では何で通貨の価値を担保するのか・・・
多分それは石油でしょう。
石油ならば量が膨大ですから
IMFのSDRを唯一の石油決済通貨にすれば、
修正ブレトンウッズ体制のドルと同様に
通貨の価値を担保する事が出来ます。
■ 中東危機の本質 ■
中東危機の本質はサウジアラビアの弱体化です。
多分、イスラエルは導火線にはなりますが、
その目的とは成り得ません。
中東で危機が発生し、
アラブ諸国がイスラエルと対峙した場合、
サウジアラビアはアメリカの手前、
反イスラエルの姿勢を強く打ち出せないはずです。
それに対して国内のシーア派を中心とする
政府に反感を抱く人々が蜂起し、
王族支配に終焉をもたらすのでしょう。
国内が混乱したサウジアラビアは
中東の覇者の座から転落します。
サウジアラビアがOPECを誘導して維持していた
ドルの石油兌換体制に終止符を打ち、
イランやトルコ、エジプトを中心とする新しい中東は、
IMFのSDRでの原油決済を打ち出すのでしょう。
既にOPEC内でのサウジの影響力は低下しています。
■ ドルが生き残るかどうかなんて問題にならない ■
こう考えてくるとドルが生き残るかどうかは、
大して重要では無くなります。
ドルもユーロも円もレートはそれ程大きく変動しないのに、
気がついたら預金も年金も保険も金融商品も価値が無くなっている。
そして、あんなに醜くく太っていた各国の財政赤字が、
知らぬ間にスリムになっていた・・・。
しかし金融のパニックは起こるでしょうから、
少なからぬ金融機関が破綻し、
個人の資産は大きく目減りします。
ここに目出度く国家は個人資産を吸い上げて
復活を遂げる事になります。
混乱の後には、新たな発展が待ち受けています。
そして、その先には今とは全く異なる世界の姿があるのかもしれません。