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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

茶番劇は終わったのか・・・定着するドル安

2011-08-02 08:48:00 | 時事/金融危機
  

■ 茶番劇は終わった ■

米下院本会議は1日、債務上限を最低2兆1000億ドル引き上げ、
財政赤字を2兆4000億ドル以上削減する法案を可決ました。

この法案は上院を確実に通過するでしょうから、
先週、世界を賑わした米国の債務上限問題は、
大統領戦まで、ひとまず休戦となった様です。

デフォルトの1日前の決着には、
茶番劇以下の笑えないコントを見せられている不快感を覚えます。

■ デフォルトは遠のいたけれど ■

債務上限問題は一応の決着を見ましたが、
市場はドルや米国債を冷ややかな目で見ています。

2兆2000億円の赤字を削減するという事は、
景気を下支えしてきた政策が中断されたり、
軍事予算が一部削減され事を意味します。

市場は米国経済の長期低迷を見越しています。

債務上限引き上げは、長い長い下り階段の踊り場に過ぎません。

■ 地方から疲弊する米国 ■

現在アメリカでは州政府の破綻リスクが著しく増大しています。
カルフォルニア州が借用書で糊口をしのいだ事は記憶に新しいと思います。

ミネソタ州、アイオワ州、オレゴン州、コネチカット州、デラウエア州、
マサチューセッツ州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州。

これらの州が現在財政破綻の危機に瀕しています。
特にミネソタ州は空港を閉鎖したり、
パスポートの発行を停止したりと
住民の生活に支障がでています。

舗装道路を砂利道に変える工事をしている所もあります。
舗装道路は補修費が掛かる為です。

アメリカの地方は日本同様に
連邦政府からの交付金で財政を維持しています。
連邦政府が緊縮財政に舵を切れば、
地方の衰退に拍車が掛かるのは日本を見れば明らかです。

■ 増大する医療・年金コスト ■

アメリカでは2012年からベビーブーマーの大量退職が始まります。
今まで労働者として社会を支えていた世代が、
逆に社会に支えられる世代になるのです。



グラフは世界各国の医療費のGDPに占める割合です。
2008年のデータですが、
アメリカが断突に多い事が人目で分かります。

ベビーブーマーが高齢者となり医療費を増大させる中で、
アメリカの財政に占める医療費の比重は、今後肥大化してゆきます。

オバマの大統領戦の公約に、国民皆保健がありました。
共和党の反対で中途半端に終わりましたが、
アメリカの財政を考慮すれば、
国民皆保健など、元々絵に描いたモチだったのです。

世間では「ブッシュ政権の尻拭いを民主党がしている」と言われますが、
民主党の政策を無批判に実行していれば、
財政破綻の時期はさらに早まる事は容易に想像出来ます。

アメリカは戦後、移民の流入などから高齢化が押さえられていましたが、
ベビーブーマーの引退によりアメリカも高齢化社会に突入します。
アメリカの財政赤字は急速に拡大こそすれ、
決して削減する事は出来ないのです。

■ 信用を失う格付会社 ■

今回の騒動でアメリカの財政危機は周知の事実となりました。

あらゆる債権の頂点に君臨する米国債とドルが
崖っぷち状態である事が、注目されています。

しかし、不思議な事に今回の騒動で信用を失おうとしているのは
S&Pやムーディーズといった格付会社です。

「米国債の格下げ」という当然の発言をしている彼らに市場は反応していません。

「格付会社の信用は失われている」という発言ま出ています。

その一方でヨーロッパの格下げにはしっかりと反応しています。
これはダブルスタンダードです。

■ 「アメリカ神話」を必死で支える人達 ■

今回の債務上限騒動でも市場は冷ややかでした。
「米国債」や「ドル」の崩壊は、金融市場の消失を意味するので、
誰もがその可能性を小さく見せようと必死です。

それでも7月の最終週は、
市場は議会の行方を固唾を呑んで見守っていました。
ネットをはじめ、米国債の話題は極端の少なくなっていました。
FRBも金融機関に有効な情報を提供していなかったので、
「アメリカ神話」の信望者達は、心の底では「神の消失」を恐れていたのでしょう。

彼ら「アメリカ神話」の信望者達は
米国債やドルが崩壊するその時まで、
神にすがっているのでしょう。

一方、内情を知る者達は、確実に米国から退却を始めています。
香港上海バンクが、米国内の支点を売却したり、
ソロスのファンドが解散したりています。

■ またもや日本が標的? ■

アメリカ信者達が鳴りを潜める一方で、
いちもながら円は高騰しました。

「日銀は介入は無い」と言っていますが、
市場の日本時間になると円が売られていた様です。
これが「ミセスワタナベ」と呼ばれるFXトレーダーの取引によるものなのか、
はたまた、日銀の介入なのかは現状では知る由もありません。

しかし、昨日は日本の大手銀行が大量のドル買いをした事が判明しています。

本日の東京市場は、円の高騰から始まり
激しい値動きが続いています。

円高を仕掛ける勢力と、それを阻止する勢力が拮抗しているのでしょう。

日銀の介入のタイミングは、史上最安値を更新するあたりだと言われています。
76円代に突入したら、スタンバイOKとなるのでしょう。

又もや何十兆円というお金が、アメリカにプレゼントされるのです。

■ 危機の頻度が早まり、そして終焉を迎える ■

今回の緊縮財政によりアメリカの景気はさらなる減速を余儀なくされます。

さらに多くの雇用が失われ、
軍事費の削減は、軍隊という雇用の受け皿をも縮小させます。

今後のアメリカの経済指標は明らかに景気後退を示すでしょう。
そのタイミングで、商業不動産の借り換えの時期を迎えれば、
多くの地方銀行が破綻してゆく事になります。

地方銀行の破綻処理を粛々と進めたいた
米連邦預金保険公社(FDIC)のベアー総裁も退任しています。

アメリカは地方の実体経済から崩壊し、
そして何度かの国家的危機の後に、終焉を迎えるのでしょう。

・・・このシナリオを止める事が出来るのは
大規模な戦争だけである事は、あまり考えたくない事実です・・・。