■ イスラエル軍の攻撃でエジプトの警官が3人死亡 ■
エジプトとイスラエルの国境周辺で緊張が高まっています。
18日にガザ地区からテロリストがイスラエルに侵入、
イスラエル領内で軍人を乗せたバスを襲撃しました。
テロリストはその後イスラエル軍と交戦し、
エジプトへと逃亡。
テロリストを追跡したイスラエル軍のヘリコプターが
エジプト国境を越えてテロリストを攻撃し、
周辺にいたエジプトの警察官3人が死亡しました。
イスラエルのバラク国防相が謝罪しましたが、
エジプトのシナイ半島で反イスラエルのデモが発生しています。
一方、ガザ地区からのロケット砲攻撃も激化しており、
イスラエル軍がガザ地区で地上戦を遂行する可能性が出てきています。
■ どこまでエスカレートするのか? ■
小競り合いは「いつもの事」と言えばその通りですが、
問題はどこまでエスカレートするかです。
中東情勢は民主化革命以降バランスが大きく変化しています。
エジプトは実権を軍部が握っていますので、
イスラエルが大人しくしていれば、
シナイ半島でこれ以上緊張が高まる事は無いでしょう。
15日のこのブログでも書いた様に、
エジプト軍は既にシナイ半島での緊張の高まりを予見していた様です。
事前に軍を増強しています。
これは対イスラエルの作戦であると同時に、
シナイ半島のテロリストの掃討作戦を兼ねています。
問題はガザ地区では無いでしょうか。
現在イスラエルは中東情勢が激変した為に
非常にナーバスになっています。
ガザ地区のロケット砲攻撃がエスカレートすれば
国内の右派の中から、ガザ地区掃討の気運が高まります。
2006年も同様にして、ガザ地区で大規模な戦闘に発展しました。
イスラエルはどうも裏でカダフィーやアサドと通じていた可能性があり、
リビアとエジプトの対立がイスラエルに有利に働いていたとも言えます。
さらにアサドがシリア国内を圧制で支配している間は、
ゴラン高原のイスラエルーシリア国境地帯は安定していました。
現在リビアとシリアは内戦状態です。
イスラエル周辺のパワーバランスは大きく崩れています。
ガザ地区のパレスチナ勢力を裏で操るのは
エジプトのムスリム同胞団です。
ムスリム同胞団は、エジプト国内で勢力を拡大していますが、
軍部と対立する事を避け、
現在はあまり目立った行動を起こしていません。
しかしガザ地区にイスラエル軍が侵攻すれば、
エジプトの世論は反イスラエルに大きく傾き、
エジプト軍が、ハマスとイスラエルの和平に失敗すれば、
国民の支持はムスリム同胞団に集まるでしょう。
エジプト軍はアメリカの傀儡とも言えますが、
アメリカの国力が低下する中で、
軍内部から反旗を翻す勢力が現れるかもしれません。
そうなれば、エジプトとイスラエルの緊張も一気に高まり、
追い詰められたイスラエルが自暴自棄な行動を取らないとも限りません。
■ キーワードはやはり石油 ■
イスラエルをめぐる緊張が高まれば、
石油価格が一気に高騰する可能性があります。
OPECでは既にサウジアラビアの権限が弱まっています。
中東有事が発生した場合、
サウジアラビアの原油の増産能力が問われてきます。
アラブ諸国はイスラエルを支援するアメリカや欧米諸国を
石油価格を盾に取って脅すでしょう。
もしこれらの国が減産に踏み切った場合、
サウジアラビアや、中東以外の油田の増産能力がこれを補えなければ、
原油価格は100ドル/1バレルを軽く越えて行くでしょう。
既に景気後退が明確なアメリカで
原油価格が上昇すれば、70年代の様なスタグフレーションが発生します。
不景気の中での物価高騰は、国民生活を直撃します。
中東情勢は、アメリカの国内情勢に直結する事に注意が必要です。