■ 原発問題も忘れていません ■
最近原発問題を取り上げていないので、
このブログが単なる「流行り物」を追いかけている
印象を持たれているかもしれません。
しかし、あるか無いか分からない放射線の危機よりも
金融危機は「今そこにある危機」で、
私達の雇用や生活や資産に直結した問題なので、
最近は金融ネタ中心の進行になっています。
事故当時は報道が危機を隠蔽していましたが、
現状は報道が過剰反応しているので
私までが騒ぐ必要も無いかとも思っています。
■ 10シーベルトの汚染 ■
昨日1号機で10(Sv/時間)という高い汚染が発見されました。
この近くで全身被曝を1時間もすれば、
確実に急性障害を起こす線量です。
これは何も驚く事では無く、
強制ベントされた放射性物質の一部が、
排気管の屈曲部に大量に蓄積していると考えられている様です。
汚染部位を鉛板等で遮蔽すれば
その近くに長時間滞留しなければ
問題にする様な事ではありません。
放射性物質は、拡散すればやっかいですが、
閉じ込められているのなら、
遮蔽すれば影響をコントロールする事が出来ます。
チェルノブイリなどは原子炉丸ごと
「鉛の棺おけ」に入れてしまった訳ですから、
まさに「臭いものには蓋をしろ」作戦です。
■ 何を計測しているのかご存知ですか? ■
食品や飼料用のワラ、
はたまた園芸用の腐葉土まで
放射能汚染は様々な所に広がっています。
福島では食品の簡易的な放射線測定も始まっている用です。
http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/143.html
ところで、この簡易測定とはいかなる物でしょうか?
上記の記事の測定器はドイツ製のLB200という機種だそうです。
http://www.berthold-jp.com/products/isotope/pdf/foodmonitor.pdf
ホームページで見る限りは、
右側の機種とは異なり、
スペクトル解析は出来ない様なので、
核種を特定する事は不可能な様です。
ところで、土壌中には天然由来のK40いう
カリウムの放射性同位体が少なからず存在します。
K40は土壌を経由して野菜や牛乳や食肉や海藻など
あらゆる食品に含まれています。
その量はだいたい次の表の通りです。
国の暫定基準値は、核種毎に決められています。
公の検査機関の測定も核種毎の計測です。
核種毎に放出されるβ線のエネルギーが異なりますから、
精密な測定では核種の特定も出来るのです。
ところが、簡易的な測定器では
γ線、β線といった大ざっぱな計測しか出来ません。
β線を計測したからと言って、
それがセシウム137由来なのか、
ストロンチウム90由来なのか、
はたまた天然のカリウム40由来なのか判別出来ません。
さて玉ねぎから20Bq/Kgのベータ線が検出されたとしましょう。
簡易測定ではその内のどれ程が天然のK40によるものか
判別出来ないのではないでしょうか?
牛乳1Kgには50BqのK40が含まれています。
原発から離れた地域の簡易測定で
多少のβ線が検出されたからと言って
大騒ぎするには及ばないのでは無いでしょうか。
■ 歯に物が挟まった物言いの、武田先生・・ ■
武田先生のこの記事をお読み下さい。
http://takedanet.com/2011/08/post_ef5a.html
武田先生は100(mSv/年)は無害と主張する医師に対して
次の様な評価をされています。
<引用開始>
一応、このお医者さんに反論しておきます。まずは論理的矛盾を指摘します。
1) 「客観的で正しいデータが存在する」ので、1年100ミリまで大丈夫、
2) 国際的な会議で1年1ミリと決まり、国内での検討でも1年1ミリと決まって法律で制限してきた、
この2つが正しいとすると、国際会議でも国内の検討でも、審議した委員の先生は「客観的で正しいデータを使わなかった」ということになります。
このお医者さんは、東北地方の首長、指導者に講演をされたそうですが、この点については講演資料には触れていません。
私は、1980年代からの国際会議の様子も、国内の委員会の議事録も目を通したのですが、もちろん放射線防護の専門家が集まっておられるので、このお医者さんが東北地方の首長さんや指導者の方にお示しになったデータはすべて知っておられる感じでした(実際にも当然、知っておられると思います)。
そうすると、
1) 原発事故が起こったから、国民に「データを示す」か(お医者さん)、
2) 原発事故が起こったら、国民に規制の意味を説明するか(武田)、
の違いということになります。この2つは本来は同じはずです。なにしろ、規制を決めた委員の人は「データ」を知っていたはずだからです。
今、多くの人が放射線に対して不安に思っています。それを解消するためには私たち専門家(いろいろな専門家)が、「なぜ、今まで規制値を1年1ミリシーベルトにしていたのか?」、「なぜ、今まで胸のレントゲンを1年に400回(20ミリシーベルト)はやめておいた方が良い」と言ったのかを最初に言わなければならないでしょう。
今までの規制値は全部、ウソだったとか、レントゲンを1年400回でも問題はない、今までは間違っていたということになれば、私たちも考え直さなければならないからです。
このお医者さんは誠意のある人と思います。こんな簡単なことがケリがつかないようでは多くの方が困るので、私も機会があればお話をしてみたいと思います。
<引用終わり>
これこそがLNT仮説のジレンマなのです。
武田先生もお人が悪い、
そのウラも多分ご存知でありながら、
放射線の危険を煽っています。
「それでいて、たまに100(mSv/年)も安全と言う人も居る」・・・とか
「100(mSv/年)が安全ならば、私は喜んで原子力村に帰れる」
などと書かれて、本音が透けて見えます。
1(mSv/年)が危険というLNT仮説が多分に政治的であり、
科学的根拠に乏しい事をご存知な上で、とぼけて見せています。
その狙いがLNT仮説の擁護にあるのか、
あるいはLNT仮説の自壊にあるのかは
若輩者の私には予想もつきませんが、
武田先生のファンとしては、
後者である事を期待します。
先生はあくまでも科学の信者であると信じています。
<追記>
誤解の無い様に追記します。
福島や福島近県の汚染地域での放射線の警戒は重要です。
一方、東京などでの過剰な警戒は費用対効果の低いものです。
精神的な安心が免疫を高めるというのであれば、
費用対効果も認められますが、
多くの人にとって、あまり神経質にならないという事も
精神的安定に繋がります。
尤も、喉下過ぎれば・・・の国民性で
ニュースが原発を報道しなくなれば、
過剰は反応も下火になって行くでしょう。
「1(mSv/年)も危険」というLNT仮説に基づけば、
原発事故の経済コストは多大な物となり、
原発は経済的に成り立たない発電方法となります。
私はここ10年程はクーラーも使いませんし、
原発反対論者ですが、
反対の根拠は「1(mSV/年)でも危険であるならば」という前提に基づきます。
この点は武田先生と意見を共にしているとも言えます。
但し、私は「1(mSv/年)も危険」というLNT仮説自体に疑いを抱いています。
この仮説こそが、今後、福島において巨大な事故処理利権を生み出します。
あるいは、福島やその周辺の住民の生活基盤を奪ってゆきます。
大ヒンシュクを覚悟で書くならば
70歳以上の高齢者が、多少の汚染食品を食べたところで
影響が出てくるのは20年後か30年後です。、
高齢者は福島近郊で、コストの安い老後生活を送る事も可能です。
ところが、汚染食品の恐怖をTVで煽られ恐怖する方の多くは
高齢者の方ではないかと思います。
一方、本来避難しなければならない
子供や妊婦が汚染地域に留まっています。
何故ならば、強制移住でなければ、
保証の対象にならないからです。
この現実は非常にドメスティックな問題です。
武田先生は、「エコポイントを貰う大人」などと
婉曲な表現をされていますが、
武田先生の文章の「エコポイント」を「原発補償金」と入れ替えれば
先生の言わんとしている事がお分かりになるかと思います。
結局、原発事故直後に妻子を海外に逃がしたのが
裕福な家庭であった様に、
命ですら、経済原理に支配されるのがこの世界のルールです。
・・・せめて政治が正常に機能する事を望みます。