■ 米国の危機の本質は変わっていない ■
昨日、長期の米国債の金利に注目と書きました。
長期金利が上昇すれば、住宅市場が壊滅状態になるからです。
世間ではサブプライム危機は過ぎ、
現在は次のフェーズの国債危機に突入したと言われています。
しかし、アメリカの危機の本質は未だ「失業」と「住宅」です。
雇用が回復しない限り、新たな住宅ローンの破綻が生まれます。
長期金利が上昇すれば、住宅購入の意欲は損なわれます。
短期金利が上昇すれば、変動金利でローンを組んでいる人は
金利負担が上昇し、新たなローン破綻を生み出します。
結局現在のアメリカの危機は、サブプライム・ローン危機の
延長線上のあると言えます。
■ 米国債危機に際して、国債金利が低下している ■
冒頭のグラフは、30年物の米国債の金利の変動です。
国債発行の上限問題がクローズアップされた7月下旬より、
30年物国債の金利は低下しています。
多くの評論家やアナリストが、次の様に説明しています。
1) 米国債は依然、世界で最も安全な投資先である。
2) 米国債は市場規模も大きく、流動性も高い
3) 米国債は貨幣に順ずる存在である
4) 危機が高まれば、リスク資産から債権に資金は移動する
5) 危機が深刻化しつつある中で、国債に資金が還流している
確かにその通りの面はあるでしょう。
・・・しかし、「国債危機」が叫ばれる中、
危機の中心である国債を買う勇気を持った者が
どれだけ居るでしょうか?
■ 米国債は誰が買っているのか? ■
現在米国債の最大の買い手はFRBです。
FRBはQE2で直接米国債を買いました。
一方FRBは市場を通しても米国債を購入しています。
FRBの資産の大半が米国債です。
FRBは米国債を購入して、ドルを発行しています。
即ち、ドルとは小口化された米国債とも言えます。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920015&sid=aeh7adfkbhpY
「FRB、QE2後も米国債の最大の買い手-今後1年で3000億ドルも」
(Bloomberg より)
これは日銀も同様です。
日銀は日本国債の直接買いつけこそ禁止されていますが、
市場を通じて日本国債を買い入れ、円を供給しています。
国債利回りと言うと、「新規国債の人気度」と思われますが、
実際には国債利回りを決定しているのは、
中古の国債市場です。
1) 国債のリスクを高まれば、市場には多くの国債が売りに出される
2) 国債が供給過剰になり、国際の価格は下がる
3) 安く買った国債を、償還されるまで保有すれば、より利益が出る
4) 中古国債購入価格に対する利回りが、安く買う程、相対利率が上昇する
5) 新規発行国債は国債の中古市場よりも低い利回りでは、売れ残る
さて、この事を踏まえた上で、もう一度上のグラフを見て下さい。
「7月下旬以降、中古市場で誰かが米国債を大量に買っている」
と解釈できます。
では誰が・・・
1) FRB
2) 日本(為替介入=米国債購入)
3) 政府の息の掛かったアメリカの金融機関
4) 米国債を大量に保有する金融機関
米国債の暴落を防ぎたいこれらの勢力は明らかに米国債を買い支えているはずです。
この状況を、米国債の暴落を防ぎたいアナリストの口から説明させると、
「最も安全な資産である米国債は、危機の時こそ人気がある」
という表現になるのでしょう。
これは、実態とは全く逆の説明です。
■ 米国債を売る勇気 ■
米国債を1社で兆円単位保有する日本の金融機関が、
米国債を大量売却できるでしょうか?
多分無理でしょう。
アメリカの証券取引委員会当たりから
「米国債の暴落を招く行為」と認定されるのが怖くて、
日本の民間の金融機関は米国債を売り抜ける事は出来ません。
むしろ米国の指示で、米国債を買い支える側にいるはずです。
イギリスは毎年6月に保有する米国債を全て売り払っています。
これは毎年の事です。
イギリスの売却する米国債を誰かが買い支えるとすると、
これはイギリスへの資金のプレゼントになります。
イギリスは米国債の下落時に米国債を買い支えている様に見えますが、
6月に米国債を売却する時に価格が上昇していれば利益が出ます。
イギリスが売却する米国債をFRBや日本やサウジあたりが買うならば、
それはこれらの国からイギリスへのプレゼントになります。
イギリスは依然アメリカの支配国である構図が浮かび上がってきます。
■ 国債危機だから下がる国債金利 ■
「国債を買い支える」という意味においてはヨーロッパも同様です。
各国中央銀行は自国国債を買い支えています。
ヨーロッパ中央銀行は、スペインやイタリアの国債を
直接購入する様です。
先進各国の国債金利は、概ね低下しています。
それは、国債が安全な資産だからでは無く、
国債が危機に瀕している事の顕れではないでしょうか?
そこで一句・・・
「危機なのに、金利が下がる、米国債」
この市場原理を無視したイカサマも何時かは崩壊します。
それが何時なのかは神のみぞ知るですが、
意外とキッカケは経済とは別の所から始まりそうです。
■ イギリスで広がる暴動 ■
イギリスでは警官によって犯罪者が射殺された事をきっかけに、
ロンドンや地方都市で若者の暴動が広がっています。
放火、略奪が繰り広げられ、
キャメロン首相はバカンス先から急遽帰国し、
議会も緊急招集されます。
暴動の直接的な原因は警官による射殺事件ですが、
暴動のエネルギーは緊縮財政による生活苦です。
現在のイギリスの姿は、1年後のアメリカの姿でしょう。
米国政府が福祉を切り詰めれば、
ロスアンゼルス暴動など比較にならない規模の暴動が
全米各地で起こるでしょう。
放火や略奪や暴力、
はたまた警官隊との銃撃戦の映像が世界に流れた時、
誰が「米国債は最も安全な資産」などと信じられるでしょうか。
アメリカでは、失業者達の不満がマグマの様に煮えたぎっています。
彼らは羊だとは限りません。
銃を手にした、暴徒に豹変するまでに、
あとどれくらいの時間が残されているでしょうか?
参考までに阿修羅の記事を・・・
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/664.html