■ 東洋の真珠 ■
仕事でシンガポールに行ってきました。
飛行機で7時間。
同じアジアなので「近い」という印象を持っていましたが、
7時間あればハワイに行けてしまいますね。
「東洋の真珠」とも呼ばれるシンガポール。
日本でも良く知られる様に、法律が厳しく、
ポイ捨ても罰金。地下鉄内の飲食も罰金。
一見、窮屈に思えますが、
国民は大らかで親切、かつ礼儀正しく、
他のアジアの国々とは全く別の文化を感じます。
シンガポールの中流以上の人達は、
日本人よりも洗練されていて
街並みも日本よりも欧米的です。
■ 若い国 ■
シンガポールはマレー半島の先端に位置する
東西42Km、南北23Kmしかない小さな島国です。
道さえ通っていれば、私なら2時間で南端から北端に到達出来ます。
もちろんジョギングで!!
シンガポールの歴史は浅く、
1613年にポルトガルが虐殺と破壊の限りを尽くして
シンガブラを滅亡させた後300年間は
漁民と海賊だけが住む土地でした。
1819年、人口わずか150人のこの島を
東インド会社書記官を務めていたイギリス人トーマス・ラッフルズが
上陸し、開発を進めて行きます。
ラッフルはシンガポールの地理的重要性に着目し、
交易の中継地としてシンガポールを発展させます。
イギリスの植民地として発展したシンガポールが
イギリスから独立するのは1963年。
マレーシアの一部としての独立でした。
さらにマレーシアから分離独立を果たすのが1965年。
丁度、私の生まれた年です。
華人(中華系)が76.7%、マレー系が14%、
インド系(印僑)が7.9%、その他が1.4%
とにかく国家として若いシンガポールは
歴史がありません。
中華系の人々は現在3世代目が中心世代ですが、
彼らは自分達をシンガポール人と言い、
中華系と呼ばれる事を嫌います。
そして、何と中国語を話せない人が多いのです。
シングリッシュとも呼ばれる独特の英語を話します。
「オーケーラー」と言うのが「OK」の発音。
シンガポール人同士の会話は、英語が聞き取れません。
しかし、ビジネスでは流暢な英語を話します。
シンガポール人は日本人よりも欧米人に近い印象で、
礼節を重んじ、法律を遵守する様は感動に値します。
「明治時代の日本」に似ているのかもしれません。
欧米の文化を無条件に受け入れ、信望しています。
それだけに政治も安定していて、
カントリーリスクが無い為に
海外から活発な投資を呼び込んでいます。
■ アジアの金融センター ■
シンガポールの産業の中心は「金融」と「観光」です。
シンガポールの中心部にこんな建物を見つけました。
「フィルーメンソン・ホール」です。
現在も使用されていて、
建物の前にはその歴史を示す案内板があります。
日本ではキワモノ扱いのフリーメンソンですが、
シンガポールではしっかりと歴史の一部として、
そして現在も活動する組織として認識されている様です。
「誰がシンガポールを作ったか」を考えれば、
シンガポールの現在の発展と、
そして金融センターとしての位置付けも理解出来ます。
日本では巧みに隠蔽されてきた歴史が、
シンガポールでは国民に受け入れられています。
ラッフルズは開国の祖として国民に人気があります。
これは「植民地教育」の結果なのでしょう。
国民の思考が完全に欧米人なのも、
植民地教育の賜物です。
公用語として英語を話し、
治安もインフラも整ったシンガポールは
欧米の金融マンにとって、生活し易い国の様です。
午後6時を過ぎると仕事を終えた金融マン達が、
巨大な高層オフィスから吐き出され
川沿いや路地裏のバーに繰り出します。
熱帯とは言え、海から吹く風は心地よく、
彼らはクーラーの寒いくらい効いた店内よりも
屋外のテーブル席に陣取って、歩道を占拠しています。
■ バブルの懐かしい臭い ■
シンガポールに現代的な高層建築が出来始めたのは
20年程前になると思います。
日本のバブルが終焉する頃、
シンガポールの建築ラッシュが始まり、
丹下健三や黒川紀章やアイエム・ペイらが
街を作り変えて行きます。
街の至る所で工事が進行中で、
インド人労働者達が働いています。
オフィスや商業ビルだけでは無く、高層の住宅が林立し、
中心街の物件は100㎡で日本円で3億程度だと
現地の人もビックリしていました。
上の写真は、ちょっと見、九龍城的な雑然さを思わせますが、
建築的には非常に面白い造詣をしています。
世界中の著名な建築家や、設計事務所が
シンガポールで様々なプロジェクトを進行中です。
中国のバブルが話題になりますが、
シンガポールの街は、「懐かしきバブルの香り」が満ちています。
世界から金融街に流入する莫大ばマネーが
このバブルを支えているのですから、
金融危機が勃発すれば、
この美しくて、礼儀正しい国の人たちの生活も
きっと一変してしまうと思うと、複雑な心境です。
(前回のアニメで「C」という作品は、勇敢にも金融をテーマにしていまいた。
内容はは未消化ながら、現代の巨大なギャンブルと化した金融の恐ろしさを
視聴者に警告するという試みは、興味深いものがありました。
ストーリーの終盤、世界的な金融危機が発生します。
アジアで最初に消滅したのがシンガポール市場であった事は
何かを予見しているようで、背筋が寒くなります。)
■ 無邪気な自信 ■
今、アジアに限らず新興国に溢れているのは「無邪気な自信」です。
彼らにとっては日本は既に衰退する哀れなアジアの島国に過ぎません。
かつて「JAPAN AS No.1]と浮かれていた時に
私達がアメリカに投げかけたのと同じ視線を、私は感じました。
「無邪気な自信」が絶頂に達して、脇が甘くなった時、
バブルは弾けるのでしょう。
そして、「無邪気な自信」は既に絶頂に達している様に思えました。
■ 東洋のギシシャ ■
シンガポールと日本の最大の違いは「年齢」です。
シンガポールの街中で老人は見かけません。
地下鉄でもシルバーシートを譲る相手が居ません。
金融危機後の世界は、こういう若い国から復興して行くのでしょう。
最も、金融と観光以外の産業の無いシンガポールがどうなるのか・・・
「東洋の真珠」が、「東洋のギリシャ」に成らない事を願います。