■ 富士山は「日帰り登山」の山 ■
男子たる者、日本最高峰の富士山には毎年でも登らねばならぬ!
ジョギング愛好者たる者、走って山頂へ到達せねばならぬ!
毎年、この時期になると、私の中の日本人のDNAが騒ぎ出します。
この魂の叫びに突き動かされて、過去2回、
富士吉田の駅から、富士山頂まで、駆け上がった事があります。
今から、7年程前になるでしょうか?
夏場の走りこみが順調ならば、5時間程度で山頂に到達し、
5合目スバルライン口には1時間半程度で下山できます。
そう、富士山は私にとっては「日帰り登山」の山なのです。
■ 少々体重オーバーだけど・・・富士山にGO ■
毎年、又富士山に走って乗ろうと思いつつも、
ここ5年ほどは、夏場の走りこみ不足から、実行できずにいました。
年々増える体重に、もう富士山には走って登れないのでは無いか・・・・
そう思うこの頃です。(今年で47歳になるし・・・)
今年の富士山の天候は不順で、週末は雨の予報が続いていました。
しかし、日曜日の朝5時に富士山の天気を調べたら快晴。
これを見た瞬間、富士山行きを決意!!
やはり、日本人の魂の叫びには逆らえません。
今年新調したトレイルラン用のバックパックに
雨具と長袖のランニングウエァー、ウィンドブレーカーを突っ込んで、
家を飛び出します。
■ 「富士吉田駅」は「富士山駅」と名が変わっていtが ■
以前は「富士吉田駅」だった駅名は、知らない間に「富士山駅」に改名されていましたが、
駅前は以前と同じ佇まい。
時刻は9時。
ここからスタートして、順調に行けば5時間後には山頂です。
ただ、当時よりも5Kg増えた体重が不安だけど・・・・。
■ 本日は吉田の火祭りだった ■
駅前の通りを右に折れたら直ぐに、大鳥居が現れます。
この通りをくぐって、浅間神社に向います。
道端に大きな松明が転がっています。
本日は吉田の火祭りの日だったのです。
「日本三大奇祭」に数えられる「吉田の火祭り」は、
この参道に巨大な松明が数多く並ぶ、勇壮な祭りです。
以前から是非見てみたいと思っていましたが、
スバルライン5合目に下山すると、バスは河口湖駅に行ってしまいます。
今年も、「火祭り」は見れそうにありません。
残念・・・。
■ 浅間神社は天狗でも居そうな雰囲気 ■
浅間神社は富士山をご神体と仰ぐ神社で全国に1300社あります。
富士吉田の浅間神社は「北口本宮冨士浅間神社」というのが正式名称です。
富士吉田の浅間神社を「本宮」と思っている人も多いかも知れませんが、
全国の浅間神社の本社は、静岡県富士宮市にあります。
そして、その「奥宮」は、富士山頂にあります。
富士山の8合目より上は、浅間神社の境内です。
富士吉田市にある「北口本宮冨士浅間神社」は延暦7年(788年)に建てられました。
元々、甲斐の国は「諏訪神社」の地ですから、
そこに浅間神社が間借りしているというのが、実際的な位置付けです。
しかし、千年を超える神社の風格は、荘厳という言葉がピッタリです。
杉の巨木で、参道は昼も薄暗く、天狗が出てきても不思議では無い雰囲気です。
本殿の脇に、地元の人が集まっていたので覗いてみると、
何と赤富士の御神輿が!!
まさか浅間神社の宮神輿が、
こんな巨大な貯金箱みたいな代物だとは思っても居ませんでした。
これを、大勢の大人が真剣に担ぐ様は、何とも不思議な光景でしょう。
・・・見てみたい!!
■ 本殿裏から、吉田口登山道へ向う ■
富士山信仰は古代からありましたが、
かつては、修験者達の鍛錬の場であり、
一般の人が富士山に登り始めたのは、江戸時代からです。
江戸の各所に「富士講」が作られ、
人々は、吉田口から山頂を目指しました。
富士山に登って、その帰りに相州「大山」(伊勢原市)に詣でるのが
江戸時代の人々の、「伊勢詣で」に匹敵する、人気の観光でした。
浅間神社は、吉田口登山道の基点でもあります。
本殿裏の舗装道路がかつての登山道です。
周囲は、カラマツや赤松林が広がり、
適度な木陰を、高原の心地よい風が抜けて行きます。
蒸し暑い東京とは別世界です。
道は緩やかな登り坂ですが、汗が滴るような事はありません。
神社から5Km程で「中の茶屋」に到着です。
昔の人は、ここで一服して、これから始まる登山に備えたのでしょう。
ここから、中野茶屋の方に進むのか、
それとも滝沢林道を通って、「馬返し」に向うのか記憶が曖昧です。
エイヤと「滝沢林道」を選んでみます。
実はこれが大間違い。
これから地獄を見る事になるとは、この段階では知る由も無し・・・。
■ 高原のワインディングロードを快走 ■
だんだんと傾斜が増してきます。
6~7%ぐらいでしょうか?
道も適度に曲がりくねって、山道らしくなってきます。
まあ、この程度は楽しい上り坂。
スピードを抑えれば、息が苦しい事もありません。
しばらく登ると、「馬返し」への分岐が現れます。
そちらに進むと、急な登りに次に、未舗装道路が現れます。
あれ、あれ???
「馬返し」までは、舗装道路だったはず。
そう思い、滝沢林道に戻ります。
尤も、滝沢林道も、記憶にある道より整備され過ぎています。
・・・なんだか不安を覚えつつ、さらに登ります。
だんだんカーブもきつくなり、
コーナーにはカーブミラーが設置されています。
カーブミラーに写るのは、青い夏空。
いつしか、周囲の木々の背も低くなり高原の雰囲気。
これは、標高が高くなって、高い木が無くなったのでは無く、
この一体の斜面が、崩落後、あまり時間が経っていない事を表しています。
富士山は、耐えず表面が崩れています。
大きな木に覆われた斜面も、何かのきっかけで崩落すれば、
地表は石ころだらけになり、
コケや地衣類から植物相は再スタートしなければなりません。
ですから、富士山では標高による樹林帯の変化の他に
同じ標高、様は水平方向での植生が様々に変化します。
それは、まさに富士山の斜面にどのように樹林帯が形成されるのかを、
ジオラマで見ている様なものです。
大規模な崩落は、道路を寸断するだけで無く、
麓にも影響を与えます。
ですから、富士山には上の写真の様な砂防ダムが沢山あります。
沢は普段は枯れていますが、
大雨の時などは、土石流が発生するのでしょう。
エ?!標高が上がり過ぎでは無いでしょうか。
さっきから、道の傾斜も10%を優に超えています。
明らかに道を間違えています・・・。
しかし、ここまで来たら引き返せません。
滝沢林道の終点は5合目ですから、もう、このまま行くっきゃ無い。
しかし、10%超えの斜度って、箱根の登りのキツイ所と同じじゃないか!!
登り始めの富士山駅が、が標高700mくらい。
滝沢林道の五合目が標高2300mくらいだから、
標高差1400mって、
エーエーエー、箱根の山登り二回分?!
斜度のキツイ道路は、踵が下がる為に非常に走り辛い。
脛やふくらはぎへの負担が、平地を走るのとは雲泥の差です。
さらに、一歩一歩が桃上げ状態ですから、疲労が溜まります。
これが、登山道ならば、傾斜のきつい所は段々になっているので、
足は平行面を支えに出来ます。
足裏が平行になっていれば、踏ん張りが利くので、
坂道よりは楽に登れます。
試しに歩道橋を階段で登るのと、
自転車用のスロープを登るのとで比べてみて下さい。
階段の方が圧倒的に負担が少ない事が理解出来るはずです。
吉田口登山道は「馬返し」からは山道です。
ですから、五合目まで一気に登っても、
足腰への負担は以外に抑えられます。
一方、この標高差を斜度を車道を走って登るのは大変です。
さらに、距離が登山道の3倍くらいになる。
さっきから、脛とふくらはぎが悲鳴を上げています。
それでも、大声で自分にカツを入れて走り続けます。
すると、道をバリケードが塞いでいます。
一般車両は、ここからは通行止めの様です。
バリケードの近くではアサギマダラ(蝶)が数頭、群れています。
■ 五合目までは後5Kmくらいか・・・ ■
白樺の林の下は溶岩です。
植物は、表層に形成された土壌根を張っているのでしょう。
同時に溶岩の隙間を根が押し広げ、岩を砕いてゆくのでしょう。
道路の一部が土石流の通り道になっています。
コメツガやシラビソも増えてきます。
どうやら、5合目まで後ちょっと。
でも、既に心がクジケそう・・・。
6合目への下山道が上方に見えています。
後少しですが、どうやら足は悲鳴を上げています・・・。
写真を撮ると自分に言い訳して、
足も止まりがち・・・。
そういえば、2000mに近づいて、少し空気が薄まっています。
頭もなんだかボーとしてきた。
■ 頂上は断念!! ■
最後の2Kmは歩いたり、走ったりで、
ようやく吉田口5合目の「佐藤小屋」に到着。
実は佐藤小屋の直ぐ近くの標識は2305mとあります。
しかし、GPS測定では、実際には2230m程度だそうです。
これは、ちょっと不思議??
ここまで時間は3時間を少し過ぎています。
さて、山頂目指すべきか、それとも・・・
■ 佐藤小屋で地元のトレイルランナーと談笑 ■
佐藤小屋でたまたま、地元のトレイルランナーの方と知り合いました。
今年も何度か富士山頂まで走っているとの事。
その方曰く。
「滝沢林道ってきついでしょう?ボクも一度トライしてみようと思っているんですよね。」
その方の奥さん曰く
「駅伝を5人で走った時は、喉が血の味がしましたよ」
ヤッパ、超疲れる訳だ・・・・。
これで心が決まりました。
「すみません、ビール下さい!!」
今日は充分に頑張りました!!
山頂は目指さずに、吉田に降りて「火祭り」を見てから帰るルートに変更です。
いやー、火祭り、一度、見に行きたかったんだよね。
ラッキー!!
・・・・なんて、自分を甘やかす私・・・・。
■ 吉田口を駆け下る ■
ラーメンで腹ごしらえして、ビールを二本飲んだらチャージ完了。
今度は、吉田口登山道を一気に駆け下ります。
江戸時代や昭和30年代までは、富士登山のメインルートだった吉田口登山道。
しかし、5合目まで車で登れる様になり、
5合目までの登山道は、ほとんど使われなくなりました。
かつて人で賑わっていた山小屋も、
今では、全て廃屋となっています。
五合目下は、ゴロゴロとした岩の段々が続きます。
途中、親子で駆け下ってきた方と一緒に走って、
30分で「馬返し」に到着。
しかし、7年前に比べて、吉田口登山道を登られる方が増えています。
中高年のグループが多いのですが、
装備からすると、山頂へは行かず、
5合目から、スバルライン5合目に抜ける日帰り登山の様です。
■ 中の茶屋からは、吉田口遊歩道を走る ■
「馬返し」から「中野茶屋」までは、真っ直ぐな舗装道路。
小さなバスが、「馬返し」まで運行しています。
中高年の方は、「馬返し」まではバスなのでしょう。
山頂トレイルラン組も、「馬返し」に車を駐車される方が多い様です。
昔は栄えたであろう「中の茶屋」も、今ではひっそりとしています。
ここからは、「吉田口遊歩道」を「クマに注意」の看板を尻目に進みます。
かつての登山道は、多分、現在の舗装された車道になるのでしょうが、
「遊歩道」は、かつての雰囲気を再現して整備されたのでしょう。
しばらく進むと、赤松林が広がります。
この赤松は融雪時の土石流(雪代ゆきしろ)から、
吉田一帯を守る為に、1624年から1643年に
信州から3万本の苗を取り寄せて作った人工林だそうです。
現代ではコンクリートの砂防ダムや雪代堀が街を守っていますが、
当時は、自然の力には、自然の力で対抗していたのですね。
さて、赤松林を抜けると、浅間神社に到着です。
時刻は午後3時過ぎ。
多分、「火祭り」は5時頃スタートでしょう。
「火祭り」については、明日の記事で紹介します。
本日は、「走って行けるかな」シリーズの第四弾。
富士山編でした。
それにしても・・・へタレな私。
来年は山頂目指して、少し、体重を落とすか・・・。
本日の登りのルート SUNTOの距離計で27Km(地図上で22Km)、標高差は1423m